化学物質の曝露が生体にどのような影響を与えるかは未だ完全にはわかっていない。自己免疫性胆管障害である原発性胆汁性胆管炎(PBC)の発症に、化粧品や食品添加物として用いられる2オクチン酸(2OA)が関与している可能性が示されている。本研究では、2OAを皮膚に投与したマウスの肝臓の炎症部位に2OAが存在するのかどうかを、ナノ粒子をイオン化補助に用いる新しいイメージング質量分析法を用いて検討した。2OAは短期塗布群では6時間で肝臓に到達し、長期塗布群では炎症部に合致して胆管周囲に蓄積し、胆汁中に排泄されていた。化学物質は皮膚を介して全身諸臓器に到達し、持続する炎症の起点になる可能性が示唆された。
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