研究実績の概要 |
ヒト体細胞を用いた再生医療の研究においても、必要な十分量の細胞数を得るのは困難であり、再現性を確認するのも一般に困難である。本研究は種々の組織由来の間葉系幹細胞を用いて細胞寿命延長の機構の詳細を明らかにし、さらに臨床応用へ向けて細胞にダメージを伴わない遺伝子導入法による細胞延命増殖の方法を確立し、細胞をできるだけ正常なまま寿命延長する方法を開発する。本研究においてはヒト骨髄間葉系幹細胞の寿命を腫瘍化させずに延長させる実験系を用いた。具体的にはヒトパピローマウイルスの系である。ヒトパピローマウイルスの部分構造遺伝子であるE6はテロメラーゼを活性化し、p53を分解誘導することによりアポトーシス、G1 arrestを回避することができる。ヒトパピローマウイルスのE7はRBファミリー (RB, p107, p130)と結合して、p16 Ink4a増加に伴ってリン酸化が阻害されたRbをリン酸化してE2F放出を可能にして細胞を不死化する。具体的にはヒト骨髄間葉系幹細胞にヒトパピローマウイルスのE6、E7、ポリコウム遺伝子群のBmi-1およびhTERTのコンストラクトをレトロウイルスにより遺伝子導入し、寿命を延長を試みた。さらに、細胞治療の応用に関して動物実験を行った。その中で寿命制御された細胞による細胞治療の効果の病理学的解析および評価システムの開発に関しても実験を進めた。細胞数の確保に際し、腫瘍化や染色体異常等を伴わないこと、さらに現在実験段階において行なっているウイルスを用いた遺伝子導入に変わる手段を開発することで細胞移植による再生医療の安全性を保証し、多くの患者に再生医療を臨床応用可能な段階へ医療全体、社会全体を導いていく。
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