研究課題
本研究では、アルツハイマー病(AD)の早期臨床検査試薬を開発するため、次の3点を重点的に行う。①シトルリン化(Cit-)グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)を高感度に検出するELISAシステムを構築し、ADの早期診断を行う臨床検査試薬を完成させる。②AD患者には、シトルリン化されたAD関連蛋白質に対する自己抗体が産生される可能性がある。そのため、Cit-GFAP,に対する自己抗体の有無を検出する検査試薬を開発する。また、③構築したCit-GFAPの高感度ELISAシステム(酵素免疫測定法)やCit-GFAP自己抗体検出試薬を用いて、ヒトでの臨床試験を実施する。昨年度、アルツハイマー病患者の脳に存在するシトルリン化GFAP(Cit-GFAP)特異的に反応するモノクローナル抗体を作成し、これら抗体を用いたELISAシステム(酵素免疫測定法)を構築した。シトルリン化タンパク質とは、タンパク質シトルリン化酵素であるPADによりペプチド中のアルギニン残基がシトルリン残基に変換したタンパク質の総称である。PADの活性化には、高濃度(1mM以上)のカルシウムイオンを必要とする。また、アルツハイマー病患者の脳では、PAD2やシトルリン化タンパク質がGFAP陽性の活性化アストロサイトに多く存在する。平成28年度、PAD2の発現、誘導機構を明らかにするため、ヒトアストロサイト培養細胞(U-251MG細胞)を用いて、PADsの発現誘導物質を探索した。その結果、細胞膜透過性 cAMP 誘導体である dibutyryl cAMP(dbcAMP)により、PAD2とPAD3の発現が顕著に誘導されることを明らかにした。また、PAD2とPAD3の発現誘導に伴い、細胞内ではシトルリン化タンパク質が増加することも明らかにした。中枢神経系におけるPADsの発現機構を明らかにできれば、シトルリン化タンパク質が原因となるアルツハイマー病発症機序の解明に繋がる可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に記載した内容を順調に行うことができた。また、非常に興味深い結果も得られた。
研究は概ね順調に進展している。現在、研究計画に変更や解決すべき課題等は特にない。
研究進行上、翌年度の使用が必要になったため。
翌年度以降に全て使用する予定である。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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