研究課題
【背景】糖尿病血管障害における微小炎症の関与が注目されている。好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)は生体防御に必要な自然免疫機構であるが、その過剰は微小炎症の原因となる。【目的】糖尿病における微小炎症の原因として、高血糖によるNETsの形成亢進を示す。【方法】健常者の末梢血から好中球を分離し、高濃度グルコースに暴露してNETsの形成を観察した。その程度を、マンニトールや2-デオキシグルコースを用いた場合と比較した。高濃度グルコースと同時に、糖代謝経路阻害剤を添加して、その影響を検討した。血清中のNETsを測定し、健常者と糖尿病患者(コントロール良好群およびコントロール不良群)で比較した。【結果】高濃度グルコースに暴露した好中球ではNETsの形成が亢進した。同じ浸透圧のマンニトールやグルコースアナログである2-デオキシグルコースではNETsの形成亢進は認められなかった。ポリオール経路に関わるアルドース還元酵素の阻害薬を高濃度グルコースとともに添加することにより、NETsの形成が有意に阻害された。血清中のNETsは、コントロール良好な糖尿病患者で健常者に比べて有意に上昇していた。【考察】糖尿病患者では高血糖のためNETs形成が亢進し、これにはグルコースが代謝されることが必要で、主にポリオール経路が関与している。糖尿病患者は、コントロールが良好であっても、食後高血糖により生体内でNETs形成が亢進し、微小炎症から糖尿病性血管障害に至る可能性が示唆された。
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Pathobiology
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Clinica Chimica Acta
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