研究課題
1.マウス肝細胞を分離し、5日間のスフェロイド培養(プライマリアディッシュ上)の後コラーゲンゲル培養を5日間行い、RNAサンプルを抽出した。RT-qPCRでHNF-4αのP1、P2アイソフォームの発現を調べ、スフェロイド培養の段階でP1アイソフォーム発現の消失、P2アイソフォームの発現増加が確認された。RT-qPCRでCOUP-TF1、COUP-TF2の発現を調べたが、明確な発現変化は認められなかった。一方、CTIP1、CTIP2のmRNA発現はコラーゲンゲル培養で上昇する傾向がみられた。2.cDNAマイクロアレイで分離直後肝細胞、スフェロイド培養5日後、コラーゲンゲル培養2日後のRNAサンプルを解析した。その結果、COUP-TF1、COUP-TF2いずれもスフェロイド培養の段階で発現が半減すること、CTIP1の発現はコラーゲンゲル培養後に新たに発現することが明らかになった。我々はCTIP1がCOUP-TFsの発現を調節する可能性を考えていたが、以上の結果はこれを支持しないと考えられる。3.我々はcDNAマイクロアレイのデータの中で、Notch1の発現がスフェロイド培養後に約9倍に上昇することを見出した(Notch2-4の発現は低く、明らかな変化なし)。Notchシグナリングは胆管上皮細胞の分化に必須であることが知られている。Jagged1発現はNotchの活性化に遅れ、コラーゲンゲル培養後に急激に上昇した。NotchのエフェクターであるHes1、Hes2、Hey1、Hey2などの発現に変化は見られず、意義は不明であるが、培養による微小環境変化に伴うNotchシグナリング活性化がHNF-4αのP1、P2アイソフォーム切り替えに関連している可能性は十分にあると考えられる。
3: やや遅れている
我々は当初、これまでの報告結果を総合し、HNF-4αのアイソフォーム切り替えにCOUP-TFsやCTIPsによる制御が関わっているのではないかと考えていたが、RT-qPCRやcDNAマイクロアレイのデータを解析することで、その可能性が低いことが判明した。しかし、同時にNotchシグナリング活性化の重要性が示唆され、28年度に行うべき新たな研究の方向性が明確となり、今後はマスタースイッチの探索を加速することが可能であると考えている。
28年度はHNF-4αのアイソフォーム切り替えにおけるNotchシグナリングの関与についてのマウス肝細胞を用いた検討を進めていく。Notchシグナリングを阻害するγセクレターゼインヒビターDAPTによるHNF-4αの発現変化やアイソフォーム切り替えに対する影響を調べる。また、Notch1をsiRNAでノックダウンする実験も行う。さらにhydrodynamic tail vein injection法により、Notch1 intracellular domain (NICD1)をin vivoでマウス肝細胞に導入し、P1、P2アイソフォームの発現を調べる実験も進めていきたい。我々はこれらの実験の準備をすでに整えており、速やかなデータ収集が可能である。
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