研究課題
昨年行った培養マウス肝細胞のマイクロアレイ解析の結果,肝細胞は培養後,糖新生を停止する一方,グルコースを活発に取り込み,解糖系およびペントースリン酸経路を活性化することが明らかになった.RT-qPCRによる検討の結果,これらの代謝関連酵素の遺伝子発現はHNF-4α P1アイソフォームの消失とP2アイソフォームの出現と時間的に一致していた.そこで最終年度では代謝状態,特に解糖系の活性化と肝細胞分化の関連について検討した.マウス肝細胞単層培養系のHNF-4α P2アイソフォームのmRNA発現は,培地中にピルビン酸を添加した場合に増強することが判明した.やや程度は弱いが,同様の効果は乳酸を添加した場合にも認められた.また,特にピルビン酸を添加した場合には胆管上皮細胞の分化マーカーであるosteopontinのmRNA発現が亢進し,肝細胞から胆管上皮細胞への分化転換が解糖系の最終代謝産物の濃度により強く影響されることが明らかになった.現在,HNF-4α P1,P2アイソフォーム切り替えのメカニズムにおけるNotch活性化の意義について検討を続けている.本研究を通し,肝細胞の胆管上皮細胞への分化転換に伴うHNF-4α P1,P2アイソフォーム切り替えは当初の予想とは異なり,COUP-TFやCTIPに依存したものである可能性は低いことが判明した.しかし,分化転換およびHNF-4α P2アイソフォームの発現が肝細胞の代謝状態に強い影響を受けるという新しく興味深い事実が明らかとなった.また,最終年度の研究を通じ,代謝調節や細胞増殖に深く関わる転写因子Mycが培養後急激に発現が増加することも判明した.今後,HNF-4α P1,P2アイソフォーム切り替えおよび分化転換のメカニズムに関し,MycおよびNotchの役割の解明に重点を置き,研究を発展させていきたい.
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