造血幹細胞移植は難治性疾患の根治療法として重要であるが、同種移植における移植片対宿主病(GvHD)はしばしば致死的であり、その制御法の確立は大きな課題である。近年、間質系幹細胞による免疫抑制作用が明らかにされ、GvHD制御の臨床研究も行われている。本研究は、概念としていまだ提唱されていない「造血幹(前駆)細胞による免疫抑制作用」を実証し、その分子メカニズムの解明と、GvHD予防・治療に適した免疫抑制作用の増強培養法を開発することを究極の目標として掲げ、本挑戦的萌芽研究として、必要な技術的基盤を確立することを目的として行った。はじめに基本GvHDモデルを至適化すべく、C57Bl/6-Ly5.2 (B6-5.2) マウスをドナー、B6 x DBA2 F1(BDF1)マウスをレシピエントとする移植系を用い、放射線照射用量、脾臓T細胞数の調整を行った。 結果、3 Gyの照射と5 x 10e6個の純化T細胞の組み合わせにより、汎血球減少と緩やかな体重減少を伴うGvHDモデルを確立したが、均質な反応を得るには非常に高いT細胞の純度が要求されることが明らかとなり、十分な数の高純度T細胞を分離する方法をあわせて確立した。次に、抗GvHD反応の被験細胞として高度に純化したB6-Ly5.2 (B6-5.1) マウス由来造血幹細胞を用いた検討を行った。上記のGvHDモデルを用いて、移植する細胞数、タイミングを変えて造血幹細胞を移植し、末梢血中の白血球数、貧血、血小板数とともに、体重を経時的に追跡した。結果、移植後早期 (< day 3) に造血幹細胞を移植した群においてわずかながら体重減少の鈍化が観察され、移植細胞に由来する血球成分による抗GvHD作用が示唆される結果を得た。
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