オートファジーは様々な疾患に関与する事が明らかになりつつあり、疾患制御の観点から大いに注目されている。中でも近年増加の一途を辿る炎症性腸疾患(IBD)に関する研究が精力的に進められ、オートファジー欠損によるパネート細胞の機能障害はIBD発症の一要因とされる。 申請者はこれまで、腸管上皮特異的にオートファジーを欠損するマウス (Atg5fl/fl Villin-Creマウス)において腸管上皮幹細胞(Lgr5+幹細胞)が劇的に減少し、腸上皮の再性能低下を招く事を見出していた。Lgr5+幹細胞の減少に伴う再性能低下はIBDなどの腸疾患に直結すると考えられ、平成27年度はLgr5+幹細胞の減少メカニズムを検証した。 Lgr5+幹細胞の維持にはニッチ機能を有するパネート細胞が不可欠である。そこで、パネート細胞特異的にオートファジーを欠損するマウス (Atg5fl/fl D6-Creマウス)を用いLgr5+幹細胞数の減少が見られるか検討したが、数は野生型マウスと同程度であった。また、Atg5fl/fl Villin-Creマウスを用い、様々な週令でLgr5+幹細胞数を野生型マウスと比較したところ、パネート細胞が形成される以前の生後2週の時点で既に数は減少していた。こうした結果から、オートファジー欠損によるLgr5+幹細胞の減少はパネート細胞の影響によるものでない事が明らかになった。
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