研究課題
培養液の水柱(高さ30~50 cm)が1.0 microm穴あき透過膜の上に水漏れなく垂直に立つ開放系の2部屋培養装置を作製し、透過膜上で培養した細胞に対して30~50 cm水柱の圧力が静的に数日間付加される培養系の樹立を試みた。A.本装置が培養系として有用であるかの検定を行った。(1)機械的検定:水柱の高さが数日~1週間程度保持されるか検討した。水柱液面の低下は1日当たり2ミリ以下にとどまっていた。実質的な水漏れはなく、透過膜通過による液面低下と考えられ、少なくとも数日間はほぼ一定の外圧力下での培養が可能と判断された。(2)化学的検定:CO2インキュベーター内に設置した後翌日に透過膜直上の培養液について、O2・CO2分圧、pHを測定し、標準的な培養液の基準値とほぼ同等であるとわかった。(3)生物学的検定:オートクレーブを適切に行うことにより、3日間の培養にて雑菌のコンタミネーションは観察されなかった。B.本装置を用いて、静的圧力に対する各種細胞の応答性を解析した。(1)上皮細胞の応答:種々の上皮細胞(NCI-H441、RLE-6TN、Caco2、MDCKなど)を0.1 microm穴あき透過膜付き培養インサートに播種し、30~50 cm水柱下で3日間培養した。細胞は扁平化し、細胞倍加時間は延長した。(2)神経細胞の応答:1.0 microm穴あき透過膜付き培養インサート内で、マウス後根神経節細胞を神経増殖因子NTF存在下に2日間培養し、神経突起のネットワークを形成させた後、30~50 cm水柱下で3日間培養した。神経突起の密度が減少し、個々の突起は細くなった。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の研究計画に即して実験を行うことが出来ており、申請時の想定にほぼ合致するデータが得られている。また、本研究課題に基づいて作製した培養装置は、世界的に見て新規であり、特許に値するものと考え、日本国内にて特許出願を行った。
圧付加に対する細胞種ごとの応答性を明確にし、その分子機序の解明を目指す。具体的には、(1)上皮細胞や神経に発現するIgCAM型接着分子CADM1の関与について調べる。圧付加によって細胞外ドメインsheddingが亢進し、全長型が減少するかどうか検討し、sheddingの阻害によって細胞変性・アポトーシスを抑制できるか検討する。(2)圧付加による遺伝子・蛋白発現の変化をDNAマイクロアレイとプロテオミクス(2D-DIGEとLC-MS/MS)により網羅的に解析し、細胞変性の分子経路を明らかにする。
培養装置にいくつかの改良を加えることでより完成度の高い装置の作製を目指したところ、段階的に改良を加える必要があり、その結果、装置の作製台数が予定より少なくなったことなどが挙げられる。
平成27年度末時点で培養装置はほぼ完成したと考えいる。次年度は、多数の装置を作製して、いくつかの実験系を同時に遂行できる体制を整える予定であり、その体制の下で研究計画を着実に遂行していく。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (6件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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