研究課題
近年、肝外胆管に附属する腺構造(Peribiliary gland: PBG)に胆道系幹細胞(Biliary Tree Stem/Progenitor Cell; BTSC)という幹細胞が存在することが示唆されているが、その実体や役割はほとんど分かっていない。本研究は、BTSCの同定法や単離法を確立するとともに、生体内でのBTSCの性状や動態を明らかにすることで、恒常性の維持や障害後の再生、癌化への寄与について明らかにすることを目的とした。初年度は肝外胆管からPBG由来細胞の分化能の評価を行なった。EpCAM+TROP2-細胞は増殖性が高く、TROP2を発現しながら上皮細胞極性を有する胆管様の嚢胞を形成する一方で、肝細胞への分化は認められなかった。また、胆管結紮による胆道障害後のTROP2の発現を調べた結果、TROP2+細胞の著しい増加が認められた。このことから、BTSCはTROP2陽性の肝外胆管上皮細胞を供給することで障害後の再生に寄与している可能性が示された。最終年度は肝外胆管上皮細胞では発現せずPGBの細胞にのみに発現するマーカーとしてSAMD5を同定した。SAMD5は障害後の肝外胆管上皮細胞で陽性になることから、PBGに存在するBTSCが再生に寄与している可能性が示唆された。さらに興味深いことに、SAMD5はヒト肝外胆管癌では陽性かつ核内移行していることを見出した。SAMD5はヒト胆管癌細胞株で強制発現させると細胞増殖の抑制が見られたことから、未知の機構で胆管癌の発生や増殖に関わる可能性が示唆された。本研究は、PBGに存在する細胞が高い増殖性を示し、胆管再生に寄与する可能性を示したとともに、新規に同定したSAMD5が肝内胆管癌と肝外胆管癌の由来の違いを区別できる可能性、及び治療標的としての可能性を示したことから、その意義は大きいと考える。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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