現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) ドナーがEBV 既感染でレシピエントがEBV 未感染の場合、臓器とともにEBV 感染細胞がレシピエントに移行しているかを実際の余剰移植片で検証する。 (2) 赤く光る(crimson)遺伝子を導入した組み換えEBV および潜伏感染細胞株(LCL)にcrimson を遺伝子導入した細胞株を作製し、感染細胞がイメージングアナライザーで可視化することで継時的に感染細胞の増殖・動向を追跡し伝播様式の解明をおこなう。この時、ヒト化マウスを用いてヒト免疫細胞(T, NK, B細胞など)存在下での免疫抑制剤投与下での感染細胞と宿主免疫細胞の動向を検討する。生体内での現象により近い環境下で検討することを可能にする。 (3) フローサイトメトリー(FCM)法・リアルタイムPCR 法によるEBV 定量解析、EBV 遺伝子解析など免疫学的、分子生物学的手法を用いて増殖している感染細胞および宿主免疫細胞の詳細な検討を行う。 以上の3点を今年度中に条件設定し、crimsonの他に蛍光強度の強い遺伝子導入した感染細胞の樹立も終え研究を進めている。可視化とウイルス学的・免疫学的解析の融合による総合的なEBV-PTLDの発症機構の解明が可能となるシステムの確立と条件設定が完了した点は予定通りといえる。実際の肝臓への感染細胞の移植に際し、肝臓組織がメッシュ状になっているため、無造作に移植すると感染細胞が全て肝臓から漏れ出してしまうことがわかり、移植法の改良を行い研究を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
40匹のヒト化マウスを作製し、20匹には可視化組換えEBV-CriをTD50で感染させ潜伏感染モデルマウスを作製する。潜伏感染モデルの完成はマウス末梢血中のEBV-DNAは一時検出された後陰性化を維持することで確認できる。潜伏感染モデル完成後、EBV-Cri感染モデルマウスから胆嚢を含み肝臓を全摘する。また、非感染ヒト化マウスから胆嚢を含む肝臓の全摘を行い、先に摘出したEBV-Cri感染マウス肝臓を移植する(図4)。肝移植後は全ての移植マウスにサルファ剤であるサルファメソキサゾール(SMX or SMZ)とトリメトプリム(TMP)という抗菌薬を5:1で配合したST合剤20mg/kg投与する。肝移植後20匹中10匹に免疫抑制薬(タクロリムス)を015mg/kg/day/2回投与する。移植後1時間後の撮影の後は毎日の撮影を行う。 また、毎週1回の末梢血採血100μlを行い、EBV定量解析とFCM解析(CD3, CD4, CD8, CD56, CD16, CD19, CD20, CD23,HLA-DR)を行い宿主免疫細胞の挙動をチェックし免疫応答の 継時変化を追跡する。①CD8などの免疫細胞の増殖開始時②感染細胞の増殖開始時③感染細胞の集積時④開始時よりも体重が4g以上の減少および行動能低下時⑤末梢血中の EBV-DNAが105 copies/μgDNA超過時には1匹ずつ解剖し各臓器のEBV-DNA量の測定による感染細胞浸潤の検討、全血採取し血球成分でFCM解析(上記遺伝子以外でCD14,CD24, Foxp3, CD27を追加)、血漿でサイトカインプロファイリング、各臓器の病理像の検討を行う。患者解析データと比較し総合的・詳細な検討を行う。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに国内在庫を押さえており、予算使用可能となり次第購入し実験を進める体制を整えている。蛍光遺伝子crimsonで検出が難しい、臓器深部に存在する感染細胞が検出可能にするため蛍光遺伝子FRP導入LCL及び組換えEBVを作成し、臓器深部に存在する少数の感染細胞をイメージングアナライザーで可視化することで継時的に感染細胞の増殖・動向を追跡し伝播様式の解明をおこなう。この時、ヒト化マウスを用いてヒト免疫細胞(T, NK, B 細胞など)存在下での免疫抑制剤投与下での感染細胞と宿主免疫細胞の動向を検討する。生体内での現象により近い環境下で検討する。
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