マウス胎生 12.5 日の胎児肝臓より長期間培養可能な赤血球幹細胞 extensively self-renewing erythroblasts (ESRE) を樹立した。1年以上継代培養可能で、表面抗原の解析から CFU-E に近い前赤芽球であることがわかった。脱核誘導培地で培養すると3日間で20%の細胞が脱核することを確認した。ESRE は凍結保存に耐え、1年間継代培養しても最終分化を経て脱核する能力を維持していた。ESRE は遺伝子導入とクローニングが可能であり、赤芽球最終分化を研究する上で有用な細胞であると言える。 ESRE は生存に SCF と Epo を必要とするが、我々はこれらの遺伝子を導入することで、培地中へのサイトカイン添加が不要となることを示した。 Ttc7 を欠損する fsn マウスの胎生 12.5 日の胎児肝臓よりESRE を樹立した。fsn/fsn ESRE は野生型同様の増殖速度で分裂した。昨年度作成した抗 Ttc7 モノクローナル抗体でウェスタンブロットを行った結果、fsn/fsn ESRE には Ttc7 タンパク質は存在しないか、あっても正常に比べて極めて少量しか存在しないことが確認できた。脱核誘導条件で培養すると野生型同様の効率で脱核したことから、脱核は Ttc7 タンパク質がなくても起こることが判明した。Ttc7 とパラログをなす Ttc7B に対するポリクローナル抗体を作成し、ESRE における発現を検討したところ、fsn/fsn ESRE では野生型と同レベルの Ttc7B タンパクが存在することがわかった。fsn/fsn ESRE が脱核できるのは Ttc7B によって Ttc7 欠損が補償されている可能性がある。今後、ESRE で Ttc7 と Ttc7B の両方を発現抑制した上で脱核を誘導してみる予定である。
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