研究課題
感染地域住民には、吸血だけではマラリア感染防御あるいは吸血行動阻害をもたらすような強い宿主免疫応答は誘導されていない。この理由として、①唾液に含まれる様々なアレルゲンによって宿主免疫応答は攪乱・脆弱化を強いられ、さらに②機能性唾液タンパクの活性部位は宿主免疫応答を巧妙に回避するようにマスクされているため、無関係な部位にのみ抗体は産生されると考えている(仮説)。「ハマダラカ唾液にマラリア原虫の感染を促進する分子が含まれている」あるいは「唾液タンパクがワクチンとして有効」との明確な報告はないが、前述の仮説に立ち、独自に発見した唾液タンパクをワクチン抗原分子としてアレルギー反応や“デコイ”障害を乗り越える全く新しいコンセプトのマラリアワクチン開発に挑戦する。28年度はマウスに蚊唾液タンパク抽出物および吸血により唾液成分の一つであるAAPP(以前に独自に同定)に対する抗体価が上昇することを立証することができた。さらにこれらマウスにマラリア原虫をチャレンジ感染させたところ、感染の進行が明らかに遅延し、原虫の増殖が阻害されたことを見出した。これらの結果は、上述の仮説「唾液タンパクがワクチンとして有効」を指示する結果であった。今後はさらに唾液成分の解析を行い、ワクチンとして効果を示す分子の同定を行う計画である。
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Malaria J
巻: 15 ページ: 251-258
10.1186/s12936-016-1297-3