研究課題
近年、東南アジアのサルに感染しているマラリア原虫Plasmodium knowlesiがヒトに感染することが報告されているが、地域により血中感染率や症状が異なる。通常低い感染率を示すP. knowlesiが、ボルネオでは高い感染率でヒトに感染し、死亡する例も出ている。そのため、P. knowlesiのヒトへの感染性や強毒化する分子基盤を明らかにすることは重要な課題である。そこで、ヒトの赤血球では長期培養ができないが、サルの赤血球では長期培養できるP. knowlesi株に突然変異率を増加させる分子を遺伝子導入し、適応進化を加速することでヒト赤血球で効率よく増殖できる原虫株を確立し、全ゲノム解析により責任遺伝子を同定する事を試みた。平成28年度には、P. knowlesiの変異型DNAポリメラーゼδを発現するプラスミドを導入したヒト赤血球非増殖P. knowlesiクローンおよびコントロール原虫について、段階的に培地中のサル赤血球をヒト赤血球に置換しながら培養したが、本研究期間中には、ヒト赤血球で飛躍的に増殖率が増加した原虫を得ることはできなかった。時々、原因が不明ながらサルマラリア原虫の培養が不安定化し、実験が中断することがあったが、大学院生をロンドン大学衛生熱帯医学大学院の共同研究者の研究室に派遣し、培養条件を再検討することで24時間で3倍の効率で増殖できるようになった。また、平成27年度にクローン化したP. knowlesiのHackeri 株は蚊から分離され、サル体内で継代されてきた株であるにもかかわらず、ヒト赤血球に低効率ながらも侵入することが分かった。P. knowlesiへの遺伝子導入等の手技の確立のために行った実験の結果を論文発表した。
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PLOS ONE
巻: 11 ページ: e0164272
10.1371/journal.pone.0164272