研究課題
病原細菌の多くは、菌体の持つ分泌装置から、菌体のDNAやエフェクター病原タンパク質を宿主に注入することで、宿主への定着や感染を可能とし、病原性を発揮する。しかし、菌体のRNAを宿主に注入する病原細菌の報告は未だない。本研究では、Helicobacter pylori (H. pylori)の新規RNAエフェクター分子を明らかにする目的で、H. pyloriがコードするmRNA、rRNA、tRNA、および多数のBacterial small RNA (sRNA)のうち、宿主感染細胞に注入されるRNAを同定し、宿主でのエフェクターとしての機能を検証することを目指した。平成28年度は、前年度に同定した候補菌体sRNAの菌体外分泌様式を同定するために、菌体細胞外分泌外膜小胞 OMV (Outer membrane vesicle)に含まれるsRNAの検出を行った結果、候補sRNAはOMVに高濃度に含まれることが明らかになった。そこで菌体培養液から調製したOMVを、各種ヒト胃上皮細胞株やマクロファージと共培養したのちに、細胞画分中に含まれるsRNAを定量的PCRにより定量した結果、目的の菌体sRNAはいくつかの細胞株に取り込まれることが判明した。現在、候補菌体sRNAの欠損変異株作製を完了したため、当該sRNAが感染時に宿主細胞に及ぼす影響を解析予定である。一方で、当該sRNAの菌体内での作用を解明するために、当該sRNAにMS2 tagを結合させた分子を作製し、結合する菌体タンパク質をプロテオーム解析に供した結果、特異的に結合する菌体分子を同定した。今後これらの分子の作用機序を解析する。
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J Vet Med Sci.
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10.1292/jvms.16-0567