研究実績の概要 |
IOLA(Infectious Organism Lurking in human Airways) は、慢性下気道感染患者由来の気管支洗浄液(BALF)検体から検出された新規な細菌様微生物である。IOLAは未だに培養法が確立しておらず、その詳細についてはほとんど明らかになっていない。我々は、臨床検体からIOLAの16S rRNA遺伝子を特異的に検出するPCR法を構築し、産業医科大学病院呼吸器内科および関連病院で得られた呼吸器疾患患者由来臨床検体を用いてIOLAの検出を行った。480検体のBALFのうち、348例が細菌感染症患者由来の検体で、そのうち12検体でIOLAが検出(陽性率3.4%)された。非細菌感染症患者由来検体132例においてはIOLAが検出されず、IOLAは細菌感染症のBALFから有意に検出されることが明らかになった(p=0.047)。また、IOLAの16S rRNA遺伝子が検出された検体から、菌体サイズ(約1μm)や低GC含量等のIOLAの特徴を利用してIOLAのゲノムDNAを濃縮し、ゲノム塩基配列決定およびゲノム解析に成功した。IOLAのゲノムはトータル303,838bpの環状で、GC含量は20.7%、310のCDS、34のtRNA遺伝子、および、16SrRNA遺伝子と23S rRNA遺伝子がそれぞれ1つづつ存在した。29個のユニバーサル遺伝子セット(本来は31遺伝子であるが、IOLAでは2つ未同定遺伝子がある)を連結した系統解析では、IOLAは真核生物や古細菌よりも細菌に近いところで分岐していた。もっとも近い分岐はマイコプラズマ属を含むTenericutes門であったが、配列の違いは真核生物や古細菌よりも大きいことが明らかになった。IOLAは感染性を有する微生物であること、および、ゲノム解析からも新規性が高い細菌の一種であることが明らかになった。
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