研究課題/領域番号 |
15K15138
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有井 潤 東京大学, 医科学研究所, 助教 (30704928)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | HSV / ヘルペスウイルス / 細胞間感染 / レセプター / 糖タンパク質 |
研究実績の概要 |
単純ヘルペスウイルス(HSV)はヒトに口唇ヘルペス、脳炎、性器ヘルペス、眼疾患といった多様な病態を引き起こし、関連する医療費はアメリカ合衆国で年間30億ドルと試算されるほど大きな問題となっている。本研究はHSVによる細胞間感染に焦点を当てる。これはウイルス粒子が細胞外に放出されず直接隣の細胞に感染する方法であり、HSVでは主要な感染経路であるものの、その複雑性からほとんど研究が行われていない。本研究では、HSVの細胞感染に重要な役割を担うウイルス糖タンパク質gE/gI複合体に注目する。gE/gIに結合し、細胞間感染を仲介する宿主因子、すなわちHSVの細胞間感染受容体を二種類のスクリーニングを行うことによって同定し、HSV細胞間感染におけるメカニズムを明らかにすることを試みている。 HSVはVero細胞では巨大なplaqueを形成するが、HeLa細胞においてはほとんどplaqueを形成しない。HeLa細胞では細胞感染を仲介する因子が低発現となっているという仮説を立て、Vero細胞のcDNA libraryをHeLa細胞に導入し、HSVによるplaque形成能が上昇したものを選抜した。また感染細胞からgEを二重免疫沈降で精製後、超高感度質量解析装置(LC-MS/MS法)を用いることで、gEと会合する700種のタンパク質を同定した。これら二つのスクリーニングの結果共通する因子に注目して今後研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルスによる細胞間感染は、生体内における病態発現に重要であると考えられているものの、その具体的なメカニズムはほとんど明らかになっていない。本研究は細胞間感染に特異的に用いられる宿主因子を同定しようとする試みである。細胞感染の効率を上げる因子の探索、および細胞感染に必須なウイルス因子と会合する宿主因子の探索という全く関連のない二つのスクリーニングによって、同じ因子を得ることができたのは、驚くべきことであり、二重のスクリーニングの妥当性を示すものであるといえる。得られた因子はすでに、過剰発現によって細胞間感染を促進すること、gEと会合することが明らかになっており、今後実際にどのようにこの因子がHSVの細胞間感染に寄与するのか解析は比較的容易であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
HSVが巨大なplaqueを形成するヒト由来の細胞であるA549やHaCaTなどを用い、得られた因子のノックダウンあるいはノックアウトを試みる予定である。これらの処置によってHSVの伝播がどのように変化するのかを、plaqueの定量、電子顕微鏡解析を用いて解析する。とくにgEの欠損株においては、感染細胞におけるウイルスカプシドの局在が変化することが知られており、同様の現象がこの因子の阻害によって起きるか否かに注目する。また、この因子はほかの宿主因子と会合しシグナルを伝達することが知られており、その特異的な阻害剤が存在する。阻害剤を用いることで、HSVによるplaque形成やカプシドの局在に影響が出るか否かも解析する。阻害剤がHSVによる細胞間感染を阻害することが明らかになった場合は、マウス感染モデルにおいて当薬剤がHSVによる病態を阻害するかどうかも解析することで、生体内のおける細胞間感染の意義を示し、新たな抗HSV剤の可能性を提示したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当研究課題は、HSVの細胞間感染受容体を探索し、分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。そのために、これまで研究代表者らは、HSVによる細胞間感染が効率よく起こる細胞(例;Vero細胞)と細胞間感染の効率が著しく悪い細胞(例;HeLa細胞)を用いて研究を進めてきた。得られた候補因子のノックダウン・ノックアウトを試みるために用いる細胞は、ヒト由来であることが望ましいが、HSVが細胞間感染を効率よく行えるヒト由来細胞での効率的なノックダウン・ノックアウトを行うことは当初困難であった。当初は、細胞間感染の効率が低いものの、ノックダウン・ノックアウトのシステムが確立しているHeLa細胞を用いて解析していた。しかし本年度の後半において、これらの細胞でもノックダウン・ノックアウトが可能なシステムの情報を得ることができた。このため、細胞株を変更し、研究計画が次年度へ繰り越されることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
HSVが巨大なplaqueを形成するヒト由来の細胞であるA549やHaCaTなどを用い、得られた因子のノックダウンおよびノックアウトを試みる予定である。これらの処置によってHSVの伝播がどのように変化するのかを、plaqueの定量、電子顕微鏡解析を用いて解析する。また、この因子はほかの宿主因子と会合しシグナルを伝達することが知られており、その特異的な阻害剤が存在する。阻害剤を用いることで、HSVによるplaque形成やカプシドの局在に影響が出るか否かも解析する。
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