研究課題
本研究では、複数のステップより構成されるHIV-1逆転写過程の無細胞再構築系を用い,新規逆転写制御の分子基盤を提示することを目的とした。 H27年度は、無細胞環境下で(-)鎖strong-stop cDNAの合成およびその後のRNaseH依存性の1stストランド転移と(+)鎖cDNA合成までを一連の反応として再構築することに成功し,ウイルスゲノムRNAの5’末端のグアニン(G)の数が、1stストランド転移に重要であることを見出した(1)。H28年度は、HIV RTにより合成された、(-)鎖ストロングストップcDNAの3‘末端構造の解析及び3’LTRのU3/R境界に高度に存在されている3つのG(3’GGG)塩基を中心にウイルスゲノムRNAに存在する新規RNA配列のcis機能と逆転写制御との関連を探った。結果:U3/R境界に高度に存在されている3つのG(GGG)塩基の欠損変異体を作成し、無細胞再構築およびウイルス複製アッセイ系の両者で評価した。いずれのアッセイ系においても3’GGGの変異の逆転写反応における影響は観察されなかった。また、ウイルス鋳型RNA5’末端のキャップ構造は、逆転写されないことが示唆された。以上より、U3/R境界に高度に存在されている3つのG(3’GGG)塩基は、逆転写過程には関与せず、コアプロモターとしての転写制御に重要である可能性を示した。一方、逆転写過程には、逆転写酵素に連結したインテグラーゼが重要であることを見出し報告した(2)。考察:本無細胞逆転写アッセイによりより、ウイルス粒子内に逆転写反応において最も効率の良い鋳型RNAを選択的にパッケージングすることを世界に先駆けて報告することができたことができた。本研究により樹立したHIV-1逆転写無細胞再構築系は、新たなシスおよびトランス制御因子の解明に有用であり、今後の検討が期待される。
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Journal of Virology
巻: 91 ページ: e02003-16
10.1128/JVI.02003-16
巻: 90 ページ: 4563-4578
10.1128/JVI.02939-15