研究実績の概要 |
腫瘍細胞で持続的に活性化されている転写因子STAT3を阻害するセンダイウイルスを作製し、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導するという「治療」をおこなうことを目的とした。 最近我々が明らかにしたC蛋白質とSTAT1の立体構造をもとに、C蛋白質とSTAT3の結合様式をソフトウェアAmberを用いて予測した。これをもとに、STAT3との結合に関わると予測されるアミノ酸残基に部位特異的変異を導入し、STAT3と結合しないと考えられるC蛋白質 C-3Q(C-E153Q, R157Q, K183Q)および C-3QL(C-Q146L, E153Q, R157Q, K183Q)を作製した。また中野祥吾先生(静岡県立大学、CRESTなど)によって予想されたSTAT3との結合を強める6個の変異(R140E, Q146I, I143T さらに K135Q, T158V, K183Q)を導入したC-Nakanoを作製したが、これらはいずれもSTAT3と結合することができず、STAT3のシグナル伝達も阻害しなかった。一方で、STAT1との結合は変わらなかった。X線立体構造が解明されていても、予想によって蛋白質相互作用を改変するのは容易ではないことが明らかになった。ファージディスプレイ法のように実際に結合する蛋白質を探索するのが最善であった。 野生型CでもSTAT3レポーターの活性が若干低下するために、STAT1を介したレポーター活性の阻害の可能性を期待して、野生型ウイルスの使用を検討した。ところが、293T細胞を使ったレポーターアッセイ、およびSTAT3活性が更新している癌由来培養細胞(DU145, MCF7, LM8)でも有意なSTAT3活性阻害はみられなかった。
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