研究課題
H5N1インフルエンザウイルスHA蛋白質に対して結合する12-15アミノ酸からなる特殊環状ペプチドを作成し、治療に用いられているリレンザと同等の良好な阻害活性を有するものを見出した。さらに、この特殊環状ペプチドがリレンザ耐性のH1N1パンデミック2009に対しても強力な阻害活性を示すことを見いだした。これは、インフルエンザウイルスの新たな抗ウイルス剤として強力な治療ペプチドの可能性を示している。マウスを用いた治療実験において、感染6日後に投与しても治療効果を示し、リレンザと異なり感染後期においても劇症肺炎抑制治療効果があることが示された。これは、感染細胞内のウイルス抗原を分解排除し、免疫担当細胞攻撃を免れ劇症肺炎発症抑制効果を示すものと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
H5N1ウイルスの致死性感染マウスモデルにおいて、特殊環状ペプチドの腹腔内投与による治療効果を検討したところ、190 mg/kg/dayの5連投で体重減少を完全に抑制し、すべてのマウスが生存した。次に、投与方法を鼻腔内投与に変更して検討したところ、1.9 mg/kg/day(腹腔内投与の100分の1の用量)でも治療効果を示した。さらに、感染中期以降(感染4日後および6日後)からの投与による治療効果について検討したところ、リレンザは感染4日後以降の投与では体重の減少を抑制できず、全個体死亡した。一方、特殊環状ペプチドは感染4日後投与においては投与完了後より体重の回復がみられ、生存率も40%を示した。また、感染6日後の投与では、感染4日後投与よりも体重減少がみられたが、生存率は40%であり生存したマウスはいずれも体重が回復傾向を示した。
特殊環状ペプチドは、ノイラミニダーゼ阻害薬であるリレンザでは治療効果がないとされる感染中期以降(感染4日後および6日後)からの投与においても治療効果を示した。一方、特殊環状ペプチドは、可溶性が乏しいため、現状としては大動物での非臨床試験に進むのは困難であり、医薬としての実用化に向けて課題がある。そこで、さらなる可溶性の向上のため、構成アミノ酸の改変を進める。
該当なし
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