研究課題
「病は気から」と古くから良く言われるように心理・精神状態が臓器機能に影響し、健康維持に深く関連することは、例えばストレスが溜まると胃が痛む、持病が悪くなる、風邪をひきやすいといったことから一般的に知られている。しかしながら、これらの分子メカニズムは現時点では未開拓であり、その解明はがんや自己免疫疾患など様々な病気に対する新しい治療戦略へと繋がることが期待できる。我々はこれまでに、局所神経活性化による固有血管の状態変化が、血中免疫細胞の中枢神経系への侵入口を形成する分子機構を明らかとし、当該機構をゲートウェイ反射と名付けた。本研究課題では、睡眠障害を慢性ストレスの一つとして捉え、過度のストレスがどのように病気を増悪するかについてゲートウェイ反射の変容に着目し解析を行った。その結果、睡眠障害による過度のストレスは、視床下部での交感神経活性化を介し、脳内局所血管においてケモカインを過剰産生することで、血中の免疫細胞の侵入口を形成した。さらに免疫細胞の集積により誘導される局所炎症が、迷走神経活性化を過剰に誘導し、胃十二指腸潰瘍を含む末梢臓器不全を誘導した。本研究は睡眠障害によるストレスが脳内での局所的な炎症を誘導する機構を明らかにし、さらに局所炎症が新たな神経活性化経路を形成することで、末梢臓器の恒常性を変容させることを示した。
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