研究課題
自然免疫系では、Toll様受容体(TLR)をはじめとする病原体センサーが、病原体の侵入を察知し、転写因子NF-kBを活性化して、感染防御反応を誘導する。ハエからヒトまで保存されているが、線虫では、TLRもNF-kBのどちらも保存されていない。それにもかかわらず、感染に際して抗菌ペプチド産生が誘導される。最近、リソソームの恒常性に重要な転写因子TFEBが線虫において抗菌ペプチド誘導に関わる事が報告された。しかしながら、TFEBのヒト・マウスの自然免疫系における解析は進んでいない。本研究で、TFEBとリソソームに局在する核酸特異的TLRとの関係に注目し、TFEB転写因子のTLR応答における役割を明らかにすることを目的として、解析を進めた。特に、TFEBを過剰発現した細胞において、TLR4/MD-2やTLR7の応答が高くなっていたことから、TFEBとTLR応答との関係について解析を進めた。しかしながら、TFEBを発現させていたベクターに問題があり、TFEBと別の分子の融合タンパク質が産生される可能性があったため、そのような危険性のないベクターで新たにTFEBを過剰発現させたところ、TLR4/MD-2やTLR7の応答の変化は認められなくなった。この時点で、TFEBの解析は断念したが、3T3細胞におけるTLR応答の分子基盤についての解析を継続した。その解析から以下の点が明らかとなった。TLR3は刺激前は核の周囲に分布しているが、刺激後は細胞膜周辺にまで移行すること、さらにその細胞内移行がTLR3依存性のI型インターフェロン産生に重要であることを見出した。さらにTLR3がリソソームに局在していることから、TLR3の活性化によってリソソームの細胞内移行が誘導されることが明らかとなった。今後、リソソームの細胞内移行とTLR3の応答についての解析を進めてゆく。
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Int Immunol
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10.1093/intimm/dxv062