研究課題
3型自然リンパ球(ILC3)の一種であるLTi細胞が生体内で最終分化し、リンパ節形成に必要な分子群を発現するためには、リンパ組織内に発現するTNFファミリーサイトカイン、RANKLの受容が必須であることを前年度までに明らかにしていた。平成28年度はLTi細胞においてRANKLシグナルの下流で発現する遺伝子群の網羅的解析を行った。その結果、成熟型のLTi細胞に発現するNotchリガンドやLymphotoxin alpha (LTa)、Lymphotoxin beta (LTb), 活性型インテグリン、MHC classII分子がRANKLシグナルにより制御されていることを明らかにした。さらに、RANKL刺激により発現が上昇する転写因子を複数同定した。そのうちの1つ、CIITAはMHCクラスII遺伝子群の発現制御に関わるマスターレギュレーターである。腸管リンパ節内のLTi細胞に発現するMHCクラスII分子が腸内細菌に反応するヘルパーT細胞の活性を抑制するとの報告もあり(Hepworth, Nature,2013) 、RANKLシグナルが末梢免疫寛容の維持に関与している可能性がある。ちなみに、RANKLは胸腺髄質上皮細胞における転写因子AIREの発現を制御することが知られているが、LTi 細胞のRANKL刺激によりAIRE発現上昇は観察されなかった。また、Forkheadドメインを有する転写因子を欠損するマウスをCRISPR/cas9法により作成した。現在、当該転写因子欠損によりLTi細胞分化や末梢免疫寛容の維持に障害が生じるか検討中である。
1: 当初の計画以上に進展している
自然リンパ球の初期分化に関する知見が他の研究グループからも蓄積されてきたが、LTi細胞の最終分化に関わる分子機構はこれまで明らかになっていない。本研究ではLTi 細胞成熟に必要なサイトカイン、RANKLを同定する事ができ、LTi 細胞においてRANKシグナルの下流で発現する分子群の同定が可能な状況となった。また、CRSPR/Cas9法による遺伝子改変マウス作成技術の導入により、標的遺伝子欠損マウスの作成と生体内における機能解明が可能になった。
平成28年度に作成したForkhead型転写因子ノックアウトマウスの解析を進めるとともに、RANKL刺激で遺伝子発現が上昇する転写因子群欠損マウスをCRISPR/Cas9法で作成する。これらの方法により、LTi細胞が最終分化するために必要なマスター制御因子の同定を試みる。
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Nature Immunology
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Physiological Reviews
European Journal of Immunology
巻: 46 ページ: 2162-74
10.1002/eji.201646313.