研究実績の概要 |
ヒト臍帯血および骨髄細胞を用いて、樹状細胞だけを大量に生み出すヒト共通樹状細胞前駆細胞(CDP)、単球・マクロファージのみに分化するヒト共通単球前駆細胞(cMoP)の同定を試みた。同定にあたっては、特に、それら細胞を生み出す上流の細胞である顆粒球・単球前駆細胞(GMP)に着目した。このGMP分画を、細胞表面分子X及びY(未発表につき詳細は非公開)の発現パターンによって4分画に細分化したところ、DC分化能はX-Y-, X+Y-分画に保存されており、この中にヒトCDPが含まれている可能性が示唆された。さらに、X+Yint, X+Yhi分画についても詳細に検討したところ、X+Yint細胞は顆粒球ならびに単球への分化能を、X+Yhi分画は単球へ限局した分化能を各々示した。一方、どちらの分画も、DC及びリンパ球への分化能は示さなかった。 これらの結果は、従来のGMPが真のGMP以外の前駆細胞を含む雑多な細胞集団であり、細胞表面分子X, Yの発現パターンによって細分化することにより、正真正銘のGMP(X+Yint細胞)、ヒトcMoP(X+Yhi分画)の同定に成功したことを示していた。現在、超重症免疫不全マウス(BRGSマウス、NOGマウスなど)に、それら新たに同定した前駆細胞を移植して、in vivoでの分化能を確認中である。今後は、DC分化能が認められたX-Y-, X+Y-分画をさらに絞り込むことによってヒトCDPの同定を試みる予定である。また、単球由来のマクロファージは様々な炎症性疾患病態の構築、破骨細胞への分化を介して炎症性骨疾患に関与すること、腫瘍随伴マクロファージへの分化を介して腫瘍の増殖・進展を促すことなどが報告されているため、それら細胞の源という視点からcMoPの分化能を解析していく予定である。
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