研究実績の概要 |
ヒト臍帯血および骨髄細胞を用いて、樹状細胞だけを大量に生み出すヒト共通樹状細胞前駆細胞(CDP)、単球・マクロファージのみに分化するヒト共通単球前駆細胞(cMoP)の同定を試みた。同定にあたっては、それら細胞を生み出す上流の前駆細胞である顆粒球単球前駆細胞(GMP)に着目した。このGMP分画を、細胞表面分子CLEC12A及び CD64の発現パターンによって4つの亜集団に細分化したところ、CLEC12A+CD64int分画は顆粒球ならびに単球への分化能を、CLEC12A+CD64hi分画は単球のみへ限局した分化能を各々示した。どちらの分画も、DC及びリンパ球への分化能は示さなかった。一方、他の2分画は複数の前駆細胞の集まった集団と考えられた。これらの結果から、従来のGMPは雑多な細胞集団であり、CLEC12A+CD64int分画が本来のヒトGMPであり, CLEC12A+CD64hi分画はヒトcMoPであると結論した。また、新たに同定した本来のGMPならびにcMoPを単離してFlt3L, TPO, SCFの存在下で24時間培養したところ、本来のGMPからcMoPとプレ単球(preMo)が出現したが、cMoPからはpreMoのみが出現した。さらに、cMoPより上流の共通ミエロイド前駆細胞(CMP)、GMP、下流のpreMo、単球(Mo)などで網羅的遺伝子発現解析(マイクロアレイ)を行っところ、CMP→GMP→cMoP→→preMo→Moへと進むにつれて前駆細胞を特徴付ける遺伝子発現パターンが失われ、逆に単球に特徴的な遺伝子発現パターンが上昇することも判明した。これらの結果は、CMP→GMP→cMoP→→preMo→Moという分化の方向性が正しいこと、cMoPを起点として単球への分化の方向性が固定することを示唆していた。またマウスcMoPと有意な相関性が認められることも判明した。
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