研究課題
ヘルパーT(Th)細胞サブセット分化は、これまでT細胞抗原受容体(TCR)シグナルとサイトカイン受容体シグナル伝達経路、また、これら2つのシグナルの協調的作用によって誘導されるマスター転写因子によるサイトカイン遺伝子座のエピゲノム調節を中心に解析が進められてきた。エピゲノム変化の誘導には、細胞内エネルギー代謝の産物としてつくり出されるアセチルCoA、S-アデノシルメチオニンやα-ケトグルタル酸などのエピゲノム酵素基質の円滑な供給が必須である。T細胞は、抗原認識後、代謝経路をダイナミックに変化させることが知られており、TCRシグナルやサイトカインが代謝リプログラミングの制御を介して、エピゲノム基質の供給を調節していることは想像に難くない。特に、Thサブセット分化においては、サイトカイン環境が分化方向に決定的な影響を与えることから、Thサブセット間の代謝経路の違いが、Th細胞サブセット分化や機能発現に関与していると考えられる。本研究で行なったin vitro解析で、TCR刺激によりグルタミン代謝が活性化し、グルタミンの代謝中間産物であるグルタミン酸の細胞内濃度はTCR刺激後24時間で約100倍に上昇することが分かった。また、グルタミン除去培地やグルタミン代謝阻害剤を用いた研究から、Th2やTh17細胞の分化にはグルタミン代謝の亢進が必要であるが、Th1細胞の分化には必須でないことが分かった。一方、iTreg細胞の分化は、グルタミン代謝を阻害することで逆に亢進された。続いて行なったTh2細胞分化系を用いた解析から、グルタミン代謝によって産生されるα-ケトグルタル酸が、Th2サイトカイン遺伝子座のヒストンH3K27脱メチル化誘導に必要であることが示され、TCRシグナルはグルタミン代謝活性化を介してTh2分化をエピジェネティックな機構で制御していることが明らかとなった。
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Nature Communications
巻: 7 ページ: 12596-12614
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