研究課題/領域番号 |
15K15159
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
大西 和夫 国立感染症研究所, 免疫部, 主任研究官 (90169011)
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研究分担者 |
藤 博幸 関西学院大学, 理工学部, 教授 (70192656)
野口 保 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (00357740)
藤本 浩文 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (60373396)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抗体レパトア / 次世代シークエンサ / 代替軽鎖 / B細胞分化 / 抗体応答 / VDJ遺伝子再構成 / 立体構造モデリング / 体細胞突然変異 |
研究実績の概要 |
世界に先駆けて確立した次世代シークエンサを用いた独自の手法によりマウス免疫系に発現するH鎖およびL鎖のV領域配列を網羅的に解析する手法をさらに改良した。1)「新規手法を用いた網羅的VDJ配列解析」の解析手法の開発:次世代シークエンサを用いた新手法で得られる配列情報は、cDNA上のVH上流非翻訳領域に始まりCH1領域のN末側数十塩基を含む長さで、VDJ配列の重複を除いたユニーク配列として約10万リード得られる。こ約の10万のレパトア配列を効率的に解析するバイオインフォマティクス手法を開発して改良した。各VHファミリーへの分類の精度についてIgBLASTを含む新しいパイプラインを構築した。これにより高速で高精度にVH、JH、DHの各配列のアノテーションができるようになった。また、体細胞突然変異(SHM)の評価方法、VDJ配列の系統樹解析などについて、既知の方法を参考にして独自に開発した。2)骨髄および脾臓のV領域レパトアの網羅的配列解析:骨髄におけるランダムなVDJ配列の発生と末梢(脾臓)におけるVDJレパトア構成の成立過程を解析した。5個体の野生型C57BL/6マウスを用い、ランダムなVDJの発生、ポジティブ選択、ネガティブ選択、末梢でのレパトア・パタンの個体差を見てレパトア形成の共通点と相違点について解析を進めている。3)骨髄におけるVDJレパトア選択機序の解析:プレB細胞受容体を形成しないノックアウトマウス(Lambda5-KO)におけるVDJレパトアの網羅的配列解析を行い野生型同腹子と比較した。両者の特徴的な構造について解析し、その概略を理解した。現在、その選択圧の作用機作について検討している。今後、計算分子生物学的な手法およびVドメインの立体構造モデリング、代替軽鎖の立体構造モデリングと分子間相互作用の解析などを行って、分子構造学的な理解を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに確立した方法論を適用する事により、概ね順調に解析が進んでいる。しかし、現行で使用している次世代シークエンサー装置(Roche454システム)がサポート中止となる事を受けて、他のメーカの装置(Illumina社MiSeqシステム)を用いた方法に改変する必要があり、それに時間を費やした。Illumina社MiSeqシステムへの移行は順調に行うことができた。この改良により、一度の実験で解析できる配列が約50万リードとなり、解像度が飛躍的に上がった。今後、MiSeqシステムを用いて集中的に実験を進めて行く。
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今後の研究の推進方策 |
1)初年度で得られたデータを解析してまとめ、論文発表を行う。 2)抗原免疫に惹起されるVHファミリー応答パタン全体像の解析:抗原免疫による末梢VDJ応答パタンの全体像を把握する。各種ウイルス・ワクチンの免疫によるVHファミリー応答パタンを比較しその特性を解析する。免疫により惹起されるVDJ応答のパタンの全体像を把握して、これまでの報告と比較することにより、本新手法の革新性、限界、問題点などを確認する。 3)抗原特異的B細胞亜群の分離とVDJレパトアの解析:抗原刺激に応答する抗原特異的B細胞をソーティングして各種B細胞亜群(胚中心B細胞、プラズマ細胞、記憶B細胞など)のVDJレパトアを解析してその動態を明らかにする。とくに、免疫記憶に組み込まれるVHファミリーの全体像を把握し、ワクチン戦略への応用を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
現行で使用している次世代シークエンサー装置であるRoche社454システムが販売中止となりサポートが受けられなくなる事を受けて、予定した一部の配列解析実験をIllumina社MiSeqシステムを用いた方法に移行する必要があった。Illumina社MiSeqシステムへの実験方法・解析パイプラインの移行は順調に行うことができ、一度の実験で解析できる配列が約50万リードと解像度が飛躍的に改善した。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、Roche社454システムを用いて行う予定であった各実験を、MiSeqシステムを用いて次年度に集中的に行う予定で、予算はこの為に使用する。実験の解像度が5倍以上に改善されたので、費用対効果は著しく向上すると考える。
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