切除不能進行または再発がん患者が自身のがん薬物療法の効果をどのように認識しているかについては、その患者が死亡するまでに受けるケアの質や患者のQuality of Lifeと関連することが報告されている。しかし、本邦における切除不能進行または再発がん患者のがん薬物療法の効果の認識と主治医の説明の有無や程度との関連は明らかにされていない。 本研究は1次がん薬物療法に不応となった切除不能進行または再発固形がん患者とその主治医を対象に質問紙を用いて行った横断研究である。患者のがん薬物療法の効果の認識と患者背景や患者の好み、主治医の説明との関連を解析した。 148人の同意患者のうち135人(91.2%)から回答を得た。回答者の年齢中央値は66.0才で、男性が62.2%、最も多いがん種は胃癌(23.9%)で、続いて大腸癌(17.9%)、肺癌(13.4%)であった。回答者のうちがん薬物療法で治癒する可能性がないと回答した割合は39.3%であった。単変量解析において年齢、性別、End-of-Life discussionの有無、治療の好み、療養場所の希望などの患者背景や患者の好みががん薬物療法の効果の認識と有意な関連があったが、主治医の説明の有無や程度との有意な関連はなかった。多変量ロジスティック回帰分析による補正後も、性別、医師のコミュニケーション評価はがん薬物療法の効果の認識と有意な関連を認めた。 本邦の切除不能進行または再発固形癌患者においては、39.3%の患者ががん薬物療法で治癒する可能性がないことを認識していたが医師の説明の有無や程度とは有意な関連がなかった。重要な情報を患者に説明する際には、患者側の要因を考慮せずに医師が説明しても患者の正確な理解は得られない可能性がある。 調査は昨年度までに終了しており、本年度は論文を執筆・投稿した。
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