少子高齢化の進展や疾病構造の変化が進む日本において、疾病の予防・診断・治療法の開発・改善を目指す医学研究はますます重要になっている。本研究の目的は、日本における医学研究基盤の上に立ち、ゲノム研究を含む先端医学研究に適用できる、患者や家族との継続的対話を取り入れた「21世紀型」の医学研究ガバナンスのための双方向コミュニケーション用インターフェイスを作成することである。 平成27年度においては、欧米、特に英国で先行して利用され始めた患者参加型医学研究用のオンラインインターフェイスについて、英国オックスフォード大の研究者によるセミナー(平成27年11月)や文献情報の分析などを通して把握した。その上で、英国で運用されているソフトウェアを取得し、神経内科疾患に合わせた日本語版のオンラインサイトの構築を進めた。平成28年度には、オンラインサイトを8割程度の完成状態にしたうえで、難病の患者団体の関係者に実際にサイトを見てもらい、患者・家族の立場からの意見を述べてもらった。本サイトへの患者の登録方法や、サイト内で設定している、患者が研究の進展とともにデータの利用方法や利用範囲についてダイナミックに変化させられるシステムの利用方法や説明文などについて、多数の意見を収集することができた。 平行して、こうした患者参加型の医学研究が日本・英国・米国で、どの程度行われているかの現状把握を行い、上記の具体的な活動の改善に生かすことを目的に、文献とウェブ情報などを対象にしたレビューを行うことにし、まず情報の収集と分析方法について検討した(論文投稿中)。今後は、1)患者関係者から構築中のオンラインサイトについての意見を聞くとともに、2)患者参加型の活動のレビューを進め、3)日本において患者参加型の医学研究をデザインするための留意点をさらに明確に抽出・整理していく予定である。
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