研究課題/領域番号 |
15K15168
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
齋藤 信也 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (10335599)
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研究分担者 |
下妻 晃二郎 立命館大学, 生命科学部, 教授 (00248254)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Slow code / スローコード / 医学的無益性 / 心肺蘇生 / 死の受容 / ベッドサイドラショニング / Good death concept |
研究実績の概要 |
「Slow code」とは、一般的に、「医師が蘇生は無意味であり価値がないと判断しているのに対し、患者家族の強い要望で行われる形式的な心肺蘇生」を指す。従来の医療倫理では、この「Slow code」は行ってはならないとされてきたが、近年、家族の死の受容の観点からこれを許容しようという考え方が見られるようになった。そこで本研究では、「Slow code」の現状を明らかにし、その積極的意義を再検討することを目的としている。 研究初年度にあたる平成27年度は、文献を渉猟し、「Slow code」「医学的無益性」に関する基礎文献リストを作成した。特に、治療差し控え、医療資源配分、ベッドサイド・ラショニングとの関係に注目して論点を整理した。その結果、医療経済性に全く配慮しなくても、やはり無益と判断される医学的介入の代表が、この「Slow code」であることが、明確となった。その成果の一端は、平成28年度に発刊予定の書籍「医学的無益性の生命倫理」の第5章「『医学的無益性』と医療経済」として公開の予定である。 また、医師調査用の調査用紙の作成に関しては、Slow codeの実施経験、現状、それに対する基本姿勢を中心とし、医学的無益性、治療差し控え、医療資源配分、ベッドサイド・ラショニングについてもその関連性が分かるような内容のものがほぼ完成している。平成28年度の早い時期に、この質問紙を用いてパイロット調査を行い、その結果をフィードバックして最終的な調査紙を作成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、①文献研究、②医師対象調査紙の作成、③看護師対象の調査票の作成を計画していたが、①については、ほぼ予定通りに研究が進行し、その成果の一部は公表出来るところまで至った。この点では、予定よりも進んでいると評価して良い。 一方、②に関しては、予定では、質問紙(案)を作成し、パイロット研究をフィードバックし、最終的な質問紙を完成させる予定であったが、質問紙(案)の段階までしか進んでいない。計画に比べて、作業が遅れ気味である。③については、②の医師用の調査票との比較を念頭に置いていることから、②に比べてもさらに進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度上期に、医師調査票を完成させ、予定どおり、同年度中に、医師対象の調査を行う。これと併行して、看護師対象の調査票も完成させ、やはり平成28年度中に調査を完了する。また、平成28年度はこれに加えて、「医師に対するフォーカスグループ・ディスカッション」を行う予定である。まずは、グループ・ディスカッションのモデレーターが用いるインタビュー・ガイドラインの作成を行う。参加医師のリクルートはスノウ・ボール方式とし、診療科の偏りや年齢、経験年数の偏りが少なくなるように調整する。対象医師10名に対し、2から3時間の予定でフォーカスグループ・ディスカッションを実施する。可能なら、医師対象のアンケート調査の結果をこのディスカッションにある程度反映したい。そのためにも、医師対象調査を年度内の早めに行うことが必要である。平成29年度は、研究最終年度であり、主としてデータ解析とそのまとめに充てる予定であるが、研究の進捗状況によっては、平成29年上期に、平成28年度に行えなかった調査を行うなど、ある程度柔軟に対応してゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に完成を目指していた医師及び看護師対象のアンケート調査用紙の作成終盤で、数人の医師及び看護師を対象としたパイロット調査が行えておらず、そのために計上していた謝金が,支出できなかった。これにより、それに相当する残額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度上期までに、調査用紙の最終版を完成させる予定であるが、その際に残額は当初予定通り使用する計画となっている。
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