最終年度に実施した研究は、「意思決定プロセスにおける情報入手・コミュニケーションとRegretの関係」と題した。乳がん罹患経験患者を対象とし、臨床における特異的なEventの意思決定プロセスにおける情報及び情報の対処、認識、価値観が意思決定という行動にどう関連するのかを探索した。さらに、以上の関連を経て意思決定した患者が、診療後に「納得しているのか」というアウトカムとの関係を明らかにすることを目的とした。 研究方法は、対象者適格基準に適した初発乳がん患者にWEB調査を行い、「罹患者属性」「情報入手」「担当医以外への相談」「担当医への相談内容」「理解」「熟考」の変数を測定する項目 24項目、日本語版Decision Regret Scale 5項目、精神的回復力尺度(Adolescent Resilience Scale; ARS)21項目の計50問の質問をした。 結果は、対象者464名、377例の回答で回収率81.2%であった。統計解析から、レジリエンスの高い女性とRegretは相関し、また診療の意思決定をした際に、理解するための相談や熟考をした女性の方がRegretが低いことが明らかになった。現在、海外学会発表および論文投稿の準備を進めている。 本研究の医学的貢献の見込みとして、今後の乳がん患者のインフォームドコンセントにおいて、患者の診療方法の意思決定への参考資料になると考える。また、本研究において予定している潜在的な母集団を見つけ出す分析の結果から、今後のがん患者の意思決定の予測モデルの構築が可能になる見込みがあると考える。
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