研究実績の概要 |
はじめて精神科デイケアを利用する患者の30~40%には医療中断がみられる.しかしながら,中断利用者への直接調査は倫理的な問題が高く行えず,推測を脱しえない状況があった.本研究では,医療社会学研究者と精神医療臨床家のワーキンググループの検討過程を経て,WEBモニタ調査を用いて中断利用者との接触を図り,医療中断やデイケア不適応利用者を減じさせる視点を得ることを目的とした. 第1報:2017年9月,WEBモニタ登録者で精神疾患をもつ本人および家族を対象にスクリーニング調査した.15861名より回答を得て,サービスや支援の内容,選択時の考慮項目,自らやめた理由,サービスの利用状況を明らかにしつつ,メインターゲットのデイケア利用経験のある本人12,168名がスクリーニングされた. 第2報:2017年10月,Marketing Research Online Community(以下:MROC)により中断者とWEBチャットによる直接のやり取りを行い,46名のデイケア利用者と対話を行った.対話はカテゴリ―に分類され,デイケア利用者の不適応行動に結びつく要因に関する質的な分析が行われた,続くアンケート項目に収れんされた. 第3報:2018年3月,第1・2報の結果からワーキングループによりアンケート項目を作成し,WEBアンケート調査を実施した.結果,71項目5件法のアンケートに376名より回答を得た.アンケートは天井フロア効果分析,回答偏向分析,G-P分析,I-T相関分析,群間比較など実施した後,因子分析を行った.因子は5因子36項目から構成され,第1因子から第5因子まで「メンバー交流」,「プログラム適応」,「スタッフの満足」,「自身の安定」,「施設への満足感」と命名できた.これらによって収れんされた質問紙は医療中断の可能性がある利用者の傾向を弁別する可能性が示唆された.
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