研究実績の概要 |
申請者らは、本研究申請において活性化されたマクロファージ(Mφ)からのPGE2分泌に、プロスタグランジン輸送体PGT(OATP2A1/SLCO2A1)による細胞内PGE2動態調節が重要であることを報告した(Biochem Pharmacol, 98:629-638, 2015)。免疫応答性発熱はPGE2に依存し、抗炎症薬の標的となるため、Slco2a1欠損マウス(Slco2a1-/-)おいて内毒素(リポ多糖、以下LPS)の発熱効果を評価した。LPSを投与したSlco2a1-/-直腸温は、投与後5時間まで野生型(WT)に比べ低値を示し、内毒素による発熱が抑制されることが示唆された。さらに、微小透析法により測定されたLPS投与後のSlco2a1-/-脳間質液中PGE2濃度はWTより有意に低かった。また、OATP2A1の発現は、脳毛細血管内皮細胞周辺に存在するF4/80陽性細胞に強く発現がみられたことから、Mφ特異的Slco2a1欠損マウス(Mφ-Slco2a1-/-)においても、LPSの発熱効果を測定した。Slco2a1-/-と同様にLPSの発熱性が抑制された。一方、LPS投与後のSlco2a1-/-血漿中PGE2濃度は、WTよりも低く、脳間質中にPGE2濃度に及ぼす脳外PGE2の影響は小さいとみられた。したがって、免疫に応答する脳内PGE2濃度調節にOATP2A1が関わることが示唆された。 一方、OATP2A1の阻害剤をFDA承認薬ライブラリーから探索した結果、高い阻害親和性を有する薬物としてスラミンが同定された。ラットにおいてスラミンのLPS発熱性に対する効果を評価した。スラミン投与群でLPSによる体温上昇が抑制されたことから、遺伝子欠損モデルのみならず、OATP2A1阻害剤の解熱作用が示された。 以上、OATP2A1は解熱性抗炎症薬の作用点として有用であることが示された。
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