研究課題/領域番号 |
15K15184
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
植田 正 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90184928)
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研究分担者 |
日下部 宜宏 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30253595)
宗 孝紀 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60294964)
阿部 義人 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60315091)
白石 充典 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00380527)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 免疫学 / 蛋白質 / 抗体 / 安定性 |
研究実績の概要 |
我々の研究室では、既にヒト型Fabの定常部のH鎖とL鎖の間を分子内架橋した変異型Fabを調製している。今年度は、X線結晶解析法により分子内架橋が形成していることを実証した。また、分子内架橋している周辺部位の構造情報も入手した。 安定なヒト型Fabを調製するために、ヒト型Fab変異体を迅速かつ効率的に作成する系を確立した。すなわち、研究分担者の九大農学研究院の日下部の協力を得て、カイコを用いることにより変異体作成を開始して2ヶ月以内にmg単位の変異型Fabを作成する方法を確立した。上述したように分子内架橋FabのX線結晶解析は終了したので、その構造情報を踏まえ、変異部位のデザインは終了した。カイコを複数頭用いることにより、並行して多くの変異体を調製できるので、来年度に向け変異体Fabを多数調製することができる準備が整った。 一方、安定性が変動した蛋白質を用いて、抗原性の違いを評価できるかどうかについて調べた。一つは研究分担者の東北大宗の協力を得て、安定性が低下したヒト型Fabの抗原性を評価する予備実験を行った。また、既に植田らの研究室では、安定性向上したダニアレルゲンDerp2の抗原性を評価する対照実験を実施しており、今年度それらが蛋白質の安定性と相関しているという結果を確認し、この結果を取りまとめた論文が国際誌に採択されることで、蛋白質の安定性と抗原性に相関があるという知見は科学的評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的はヒト型Fabの定常部位を安定化することで、マウスに対する抗原性が低下するかどうかを明らかにし、臨床試験中などに報告されているヒト型抗体の不都合な抗原性低下を目指すものである。今年度はヒト型Fabの定常部のH鎖とL鎖の間に施した分子内架橋の構造情報をX線結晶解析により明らかした。又、迅速に変異型ヒト型Fabを調製する発現系を調製した。これらの結果は来年度、安定化したヒト型Fab変異体の調製の可能性を広げるものである。予備実験ならびに対照実験から、安定なヒト型Fabが調製できれば免疫原性の評価は可能である。従って、本研究目的遂行は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、安定なヒト型Fabを調製するために、現在はヒト型Fabの定常部のH鎖とL鎖の間の分子内架橋を基盤として、変異型ヒト型Fabをデザインしている。本方法により安定化ヒト型Fabが調製できる可能性は高いが、バックアップ実験として、ヒト型Fabの定常部の反応性の高いアミノ酸残基に反応性の高い二価性架橋試薬を用いて分子間架橋を実施する。また、ヒト型Fabの定常部に今年度確立した変異導入法により、新たに反応性の高いアミノ酸残基(システイン残基、ヒスチジン残基等)を持つ変異型ヒト型Fabを調製して、化学修飾法によりヒト型Fabの安定化を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度をまたいで投稿している論文があり、掲載費用、別刷り費用を確保するため。
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次年度使用額の使用計画 |
幸い報告書を記載する段階で受理されたので、論文の掲載費用、別刷り費用に充てる。
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