研究課題
増殖/再発/転移といった難治性癌に対する新規治療法戦略として、M2 マクロファージ様細胞である腫瘍関連マクロファージ(TAM)が注目され、TAM をM1 様細胞へ表現型転換することで、癌細胞を取り巻く悪性化微小環境の改善と、M1 様細胞による癌細胞死を誘導する”TAM のre-education”療法が有望視されている。この戦略を実現するには、治療効果の向上や副作用の軽減の観点から、TAM(M2)に効率良く送達するための担体が必要不可欠である。本研究では、我々が独自に開発した遺伝子組換型マンノースHSAをTAM表面に高発現するCD206標的担体のシーズとして採用した。本年度は、1) rMan-HSA を基盤としたTAM 標的化担体を設計・作製し、2) それらのin vitro 及び in vivoにおける動態特性を解析した後、3) M1 誘導剤を修飾することでin vivoで機能するナノM1誘導体の候補物質の調製を到達目標とした。まず、種々のrMan-HSAのPEG化を試みたところ、分子量の異なるPEGをCys34に対して特異的に修飾することができた。これらはいずれもTAM様細胞に高い認識能を有していた。担癌マウスを用いたin vivo実験により、PEG化rMan-HSA誘導体の中でも、PEG化rMan-HSAダイマーが最も高い腫瘍集積性と低い肝移行性を示した。したがって、TAM標的化担体としてPEG化rMan-HSAダイマーを適用することとした。最後に種々のM1誘導体をPEG化rMan-HSAダイマーに結合・修飾してin vivoで機能するナノM1誘導体の候補物質の調製に着手した。今回取り組んでいる能動的送達システムにより、TAM の表現型転換を効率良く実現できれば、治療抵抗性、転移や再発といった難治性癌に対する革新的な免疫治療戦略の道を拓くことが大いに期待される。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、TAM をM1 様細胞へ表現型転換することで、癌細胞を取り巻く悪性化微小環境の改善と、M1 様細胞による癌細胞死を誘導する”TAM のre-education”療法の実現に向けてin vivoで機能するナノM1誘導体の開発を最終目的としている。本治療戦略において重要な鍵を握るのはTAM 標的化担体の創製である。本年度の到達目標は、1) rMan-HSA を基盤としたTAM 標的化担体を設計・作製し、2) それらのin vitro 及び in vivoにおける動態特性を解析した後、3) M1 誘導剤を修飾することでin vivoで機能するナノM1誘導体の候補物質を調製することであった。これらの課題に対して、ほぼ予定どおりの進捗状況を達成することができた。すなわち、1) 種々のrMan-HSAのPEG化を試みたところ、分子量の異なるPEGをCys34に対して特異的に修飾することができた。2) これらはいずれもTAM様細胞に高い認識能を有していた。担癌マウスを用いたin vivo実験により、PEG化rMan-HSA誘導体の中でも、PEG化rMan-HSAダイマーが最も高い腫瘍集積性と低い肝移行性を示した。したがって、TAM標的化担体としてPEG化rMan-HSAダイマーを適用することとした。3) 最後に種々のM1誘導体をPEG化rMan-HSAダイマーに結合・修飾してin vivoで機能するナノM1誘導体の候補物質の調製に着手した。以上の進捗状況からおおむね順調に進展していると評価した。
本年度は、1) 昨年度着手したM1誘導体のPEG化rMan-HSAダイマーへの結合・修飾によるナノM1誘導体(rMan-HSA-M1 誘導剤)の作製を行う。次いで、2) それらのM1 誘導化能をマクロファージ細胞を用いたin vitro 実験系で比較検討する。その際、コントロールとして、HSAダイマー、rMan-HSAダイマー及びM1 誘導剤を用いる。この中で、M1 誘導能が最も強力なrMan-HSAダイマー-M1 誘導剤を数種類選別する。次に、常法により採取したマウス腹腔マクロファージを、腫瘍細胞の培養液上清で培養し、TAM 類似のフェノタイプを示すM2 様マクロファージを作製する。この系に、2)で選択したrMan-HSAダイマー-M1 誘導剤を添加し、TAM に対するM1 誘導効果を再評価する。得られた結果の中から、M1 誘導能が強力なrMan-HSAダイマー-M1 誘導剤を選別する。このrMan-HSAダイマー-M1 誘導剤の体内動態特性を正常及び担癌マウスを用いて検討する。最後に、rMan-HSAダイマー-M1 誘導剤を担癌マウスに投与して、in vivo でのM1 様誘導化能、抗腫瘍効果及び有害事象の有無を総合的に検討する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 10件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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