神経伝達物質受容体、イオンチャネルに代表される疎水性膜タンパクは、自己免疫性精神神経疾患の標的抗原となることが知られている。その診断には、血液中の疎水性膜タンパクに対する自己抗体の検出システムの開発が必要とされている。前々年度および前年度に続き、自己抗体検出システムのコンポーネントとしての自己抗原膜タンパクを大腸菌に大量発現させ、電気泳動ゲルから回収するとともに、ナノファイバー化への条件検討を行った。成果は、以下の通りである。 ① アセチルコリン等の神経伝達物質の受容体サブユニットのcDNAをクローニングし、プラスミド(pTac-2)に組み込んだ。さらに、cDNAを大腸菌発現用ベクター(pColdTFDNA)に移し、大腸菌 [Rosetta2(DE3)PlysSあるいはOrigami2(DE3)PlysSなど]を形質転換した。得られた大腸菌を液体培地の中で増殖させ、低温下(15℃)にてIPTG (isopropyl β-D-thiogalactopyranoside)を添加して発現誘導をかけ、さらに24時間培養を続けた後、菌体を回収した。 ② 得られた菌体成分をSDSポリアクリルアミド電気泳動にて分析したところ、4種のcDNAのうち3種において、推定される分子量をもつ融合タンパクの誘導が繰り返し確認された。大腸菌培養のスケールを増大させた。 ③ ①、②の結果得られた神経伝達物質受容体サブユニットタンパクをゲルから種々の溶液中に回収し、ナノファイバーに組み込むための諸条件の検討を行った。ファイバー化に適した条件を模索している。
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