研究課題/領域番号 |
15K15191
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増井 俊彦 京都大学, 医学研究科, 講師 (20452352)
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研究分担者 |
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
芳賀 早苗 北海道大学, 保健科学研究院, 特任講師 (60706505)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | p62 / オートファジー / 神経内分泌腫瘍 |
研究実績の概要 |
本研究では、この蛋白質が膵癌の早期発見のための新たなバイオマーカーとなりうる可能性を検討し、早期診断のみならず、機能的に意義のある個々の腫瘍の性質を反映したマーカーとして開発し、最終的にはテーラーメード医療の一助とすることを目標としていた。 昨年パイロット的に行ったヒト膵癌症例における血清の術前術後の変動についてはさらに症例を10例追加し、検討したところ、昨年と同様、p62の発現と膵癌の有無について有意な変動が見られず、少なくともELISAではp62の血清レベルの変化が認められなかった。少なくとも膵癌における血清での変化は現在のELISAでは捉えられない可能性が高いと考えられた。 一方、膵神経内分泌腫瘍ではmTORが亢進しており、その結果、オートファジーが押さえられる経路が働いていることから、オートファジーのリクルート因子であるp62が蓄積し、発現が高いことが推察された。膵神経内分泌腫瘍病理組織において8例において染色を行ったところ、p62の発現は腫瘍にて発現が見られたが、同時にラ氏島においても発現が見られ、腫瘍特異的ではなかった。しかしながら、同時に染色したオートファジー因子、LC3-IIはmTOR阻害剤投与腫瘍において染色性が上昇していることがわかり、mTOR阻害剤によるオートファジー亢進作用による腫瘍増殖抑制効果減少が想定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵癌切除標本では半数の標本でのp62の染色が得られることがわかり、膵癌血清を正常と比較したELISA多数の解析を行ったが、当初の予定である、膵癌血清におけるp62を使用した同定が困難なことが明らかとなった。しかしながら、膵神経内分泌腫瘍において、p62を含めたオートファジーの関与を示唆される結果が得られ、膵神経内分泌腫瘍の治療薬となり得る新たな概念が創出できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題におけるp62を使用した血清レベルでの膵癌の同定が現時点での技術的困難があることが明らかとなった現在、研究の方向性を膵神経内分泌腫瘍に移し、p62のみならず、オートファジーと膵神経内分泌腫瘍の関係へ研究を展開する予定である。mTOR阻害薬を使用した際のオートファジー経路の亢進を示唆する免疫染色を得たことから、オートファジー抑制薬剤がmTOR阻害剤と併用することで膵神経内分泌腫瘍の薬剤になり得る可能性が示唆され、細胞株を使用して検討する予定である。さらにゼノグラフトモデルおよび膵神経内分泌腫瘍自然発生マウスであるMEN1マウスを用いて、mTOR阻害剤併用オートファジー抑制薬剤による腫瘍抑制効果を検討し、治療薬になり得るかの検討を進める予定である。
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