薬物療法を受けていない健常成人男性10名、女性30名に、12時間絶食後、テストミール(エネルギー460 kcal、蛋白質18 g、脂質 18 g、キューピー社 E460F18)を摂取してもらい、負荷前、30分、1、2時間後の、血糖や中性脂肪、リポポリサッカライド (LPS)を含む代謝パラメータを測定し、末梢血単核球(PBMC)も負荷前、1、2時間後に分離しRNAを抽出した。
対象者全員の空腹時の血糖と中性脂肪は正常範囲であり、食後のLPS上昇と中性脂肪上昇の間には正相関が認められた。食後の血糖と中性脂肪の上昇が共に20mg/dL未満の低リスク群、上昇が共に60mg/dL以上の高リスク群、および中間群に分け、低リスク群と高リスク群のRNAを用いてマイクロアレイ解析を行った。平成27年度の成果として、食前のSOCS1およびSOCS3 mRNA発現量が、炎症性サイトカインmRNAの発現変化に有意な負の相関を認め、食前採血で食後の酸化ストレスが評価できると考えられた。そして、低リスク群と高リスク群のマイクロアレイ解析から、SOCS1やSOCS3と同様の変動パターンを示し、低リスク群の食前のPBMCにおいて高リスク群と比してSOCSより大きな変化を示す因子Aを同定した(未発表データ)。因子Aは炎症性サイトカインと拮抗するなど、炎症を制御する作用を持つ分泌蛋白であり、食事負荷によって生じる炎症反応の強度は、食前の因子A mRNA レベルによって評価できることが示唆された。
以上より、食前のPBMC中因子A 発現レベルを測定することは、生活習慣病リスクの評価につながることが期待される。
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