研究課題/領域番号 |
15K15200
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 利行 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10350430)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自己抗体 / 自己免疫疾患 / 蛋白質同定 / 糖鎖修飾 |
研究実績の概要 |
自己免疫疾患の特徴は疾患特異的な自己抗体の存在である。自己抗体の産生機序の一つとして、対応抗原である蛋白質が疾患特異的な翻訳後修飾をうけることが提唱されている。本研究では翻訳後修飾の中でも糖鎖修飾を標的とした。多くの癌種でムチン1の糖鎖異常があるなど疾患と関連する報告があり、様々な疾患で治療標的となりうる糖鎖異常が同定されると予想されるが、疾患特異的糖鎖異常を受けた蛋白質の同定はまだ十分とは言えない。以上の背景から、本研究の目的は、疾患特異的な糖鎖修飾変化を受けた蛋白質に対して産生された自己抗体の汎用的な検出法の確立とし、本年度は、疾患特異的な蛋白質糖鎖修飾異常を簡便に検出可能とするスクリーニング系の構築を試みた。 健常者の末梢血単核球(PBMCと略)の細胞質蛋白質を12.5%のポリアクリルアミドゲル電気泳動で展開させ、そのゲルをPVDF膜に転写した。蛋白質が転写されたPVDF膜を50 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)中に浸し、そこに酵素濃度を変化させたPNGase F (Peptide-N-Glycosidase F)を加え、37℃で24時間の反応を行った。反応終了後、反応を行ったPVDF膜に対し、N型糖鎖中のマンノースを認識するConAを用いたレクチンブロットを行った。その結果、PVDF膜上で高分子側でのPBMC細胞質蛋白質の脱糖鎖が確認された。細胞質蛋白質の中に糖鎖が修飾される蛋白質が複数存在することを明らかにした。逆に、PVDF膜上で低分子側の蛋白質ではほぼ脱糖鎖が確認されなかった。酵素濃度や反応時間などの条件を検討したが、蛋白質を転写したPVDF膜上での効率の良い脱糖鎖を可能とする系を構築するには至らなかった。そこで、その代案として、蛋白質の脱糖鎖は液相での反応で行うものとして、脱糖鎖後の蛋白質に対して、自己免疫疾患患者血清および健常者血清を反応させることで、疾患特異的糖鎖異常蛋白質を新たに同定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
蛋白質を展開させたPVDF膜上で、PNGaseFにより効率よく脱糖鎖をさせる反応系は構築には至らなかったが、PNGaseFを用いて、脱糖鎖されたPBMCの細胞質蛋白質サンプルを作製することに成功している。今後は、得られた蛋白質サンプルを用いて、自己抗原となる蛋白質の同定を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、液相反応により脱糖鎖されたPBMCの細胞質蛋白質サンプルを抗原として、新たな自己抗原となる、疾患特異的糖鎖異常を受けた蛋白質の同定へと進めていく。また、自己抗原の同定に至らない場合、脱糖鎖に用いる糖加水分解酵素を変更するなどして、スクリーニング系の修正をしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度は糖蛋白質の同定およびその解析に着手ができなかったため、少々予算より支出が少なく残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
ほぼ申請書に沿って使用する予定であるが、達成度が遅れている新たな自己抗原となる糖蛋白質の同定に関する試薬などに大きく配分する予定である。また、研究計画最終年度であるため、学会発表にも使用する予定である。
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