研究課題
自己免疫疾患の一部では、疾患特異的な自己抗体が産生される。自己抗体産生の原因として、抗原蛋白質の翻訳後修飾による抗原性の獲得が考えられる。糖鎖修飾は翻訳後修飾の一つであり、悪性腫瘍やIgA腎症では糖鎖修飾の異常が認められる。糖鎖異常についてはその構造解析に主眼が置かれてきたが、糖鎖異常を来した蛋白質の同定は十分には行われていない。本研究では、疾患特異的な糖鎖修飾変化を受けた蛋白質を、産生自己抗体の有無により検出・同定する方法の確立を目指した。具体的には、関節リウマチ(RA)患者血清が認識する、N型糖鎖が脱糖鎖された末梢血単核球(PBMC)由来蛋白質の検出・同定を試みた。まず簡便な検出法の確立のため、SDS-PAGE後に転写したPVDF膜上でPBMC蛋白質の脱糖鎖を試みたが、膜上での脱糖鎖は困難であった。そこで、PBMC蛋白質の脱糖鎖を液相で施行した後にRA患者血清を用いてウェスタンブロッティングを行い、RA特異的な糖鎖異常が起きた蛋白質に対する自己抗体を検出することで、RAで糖鎖異常を示す蛋白質を新たに同定する系の構築を目指した。第一段階として、健常者のPBMC蛋白質を peptide-N-glycosidase F (PNGase F)で処理し、 N型糖鎖のマンノースを認識するレクチンを用いたブロッティングにてPBMC蛋白質の脱糖鎖のプロファイルを解析した。脱糖されたPBMC蛋白質のバンドは、高分子側に数本検出された。第二段階として、脱糖鎖PBMC蛋白質に対しRA患者および健常者の血清を反応させ、脱糖鎖蛋白質に対する自己抗体の検出を試みたが、目的の自己抗体検出には至らなかった。今後は蛋白質源を、糖蛋白質を多く含むと考えられる血清蛋白質等に変更し、RAで糖鎖修飾異常を示す新たな蛋白質の同定を試みる。
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