研究課題
我々が経験する強い痒みは非常に耐え難く、生活の質を著しく低下させる。一方、最近、神経ペプチドホルモンのガストリン放出ペプチド(GRP)、およびその受容体(GRPR)が介在し、延髄・脊髄レベルで痛覚とは乖離した神経機構により、痒覚を特異的に伝達することが報告された。そこで本研究では、げっ歯類の掻痒症モデルを用いてGRP系に着目し、難治性掻痒症の神経機構とその病態生理の解明に迫る。これまでヒトを含む霊長類の脊髄におけるGRP関連の報告は乏しいため、本研究では、霊長類の脊髄や脳幹におけるGRP発現とその生理機能を明らかにする目的でマカクザルを用いて解析した。バイオインフォマティクス解析および遺伝子クローニングによりGRP/GRPR遺伝子の同定を試みた結果、マカクザルとヒトのGRPの一次構造は完全一致しており、GRP/GRPR遺伝子は霊長類間で高い相同性を示した。さらに、ニホンザル脊髄や脳幹を用いてGRP免疫染色を行い、GRPの発現分布を解析した。その結果、解析したすべての脊髄レベル(頚髄、胸髄、腰髄、仙髄)で共通して、脊髄後角に強いGRP免疫陽性反応を示す線維が観察された。さらに、それに対応して、比較的小型の後根神経節ニューロンの一部にGRP陽性反応を認めた。以上の結果、霊長類の脊髄においてもGRP系が存在することが強く示唆された。次に、本研究室で作出したGRPR遺伝子改変ラット [ GRPR発現細胞に赤色蛍光タンパク質RFPとヒトジフテリア毒素受容体を同時に発現するトランスジェニック(Tg)ラット ] に対してジフテリア毒素の微量投与を行った。投与後、本Tgラットの脳と脊髄におけるGRPR発現ニューロンについてRFPシグナルを指標に解析した。その結果、ジフテリア毒素を投与した脳・脊髄領域においてRFP陽性ニューロンの著しい減少を認めた。
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