研究課題/領域番号 |
15K15204
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
片野坂 公明 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (50335006)
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研究分担者 |
片野坂 友紀 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60432639)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 熱痛覚 / 侵害受容器 / 一次知覚神経 / 温度受容体 / TRPV1 / TRPV2 |
研究実績の概要 |
本研究は、一次感覚ニューロンにおける神経活動依存的タンパク質リン酸化反応や蛍光色素の取り込みという現象を利用して、高温熱痛覚に関与する感覚ニューロンを同定し、その発現分子と生理機能の解析から、熱痛覚のメカニズムの理解を目指すものである。平成27年度は、以下の実験により、新たな高温感受性一次感覚ニューロンの特定を試みた。 ①,既知の熱感受性イオンチャネルであるTRPV1の欠損マウスの後肢に熱刺激を与え、その直後にホルムアルデヒドの灌流により組織の急速固定を行ない、脊髄後根神経節(DRG)の組織試料を作成した。その後、免疫組織化学的に抗リン酸化ERK(pERK)抗体への陽性を指標に高温感受性細胞を特定し、さらに多重免疫染色を実施した。その結果、高温依存的にpERK陽性を示す細胞の多くは、TRPV1およびV2に陰性であることが明らかとなった。また、これらの高温感受性細胞には、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)陽性細胞の割合が高く、組織化学的にも侵害受容器であることが示唆された。当初計画していたTRPV2欠損マウスでの実験は、今年度動物の供給元施設の事情により動物が利用できなかったため、実施していない。 ②,イオンチャネルの活動依存的な色素取り込み現象を利用して、高温感受性細胞の選別が可能かどうか検討した。一次感覚ニューロンの温度感受性分子TRPV1およびTRPV2をHEK293細胞で一過的に発現させ、スチリル系色素を含む溶液中で高温刺激を与えて温度依存的な色素取り込みを調べたが、これまでのところ、これらの分子に依存した色素取り込みは観察されていない。 ③,また、次年度の実施を予定している培養一次感覚ニューロンの高温応答記録に際して、熱による細胞へのダメージを低減するため、50℃以上の高温刺激を約1秒で与えることが可能な温度刺激装置を自作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究遂行に必要な人員確保が計画通りに進まなかったこと、また、使用を予定していた遺伝子改変マウスについて、その供給元の動物飼育施設の改修工事があり、動物の供給が行えなかったことが要因である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、本研究に携わる連携研究員として大学院生1名を確保した。昨年度に引き続き、脊髄後根神経節での高温依存的pERK陽性標識と他の神経マーカー分子の多重免疫染色を実施し、高温感受性細胞の特定を進める。新たなマーカー分子としては、各種神経栄養因子受容体、IB4(アイソレクチンB4)、NF200(ニューロフィラメント200), peripherin,他の熱感受性イオンチャネルを計画している。 また,初年度の実験では、生きた培養神経細胞での温度依存的スチリル系色素の取り込みに成功していないことから、その検討を早急に進める。また、本実験が上手くいかなかった場合に備えて、色素取り込みを実施していない未標識の一次感覚ニューロンの初代培養細胞集団を用いて、熱刺激による温度応答の記録(カルシウムイメージング法,パッチクランプ法)を並行して実施し、TRPV1欠損動物に残存する温度感受性細胞の応答の特性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
温度刺激装置の製作を業者に依頼していたが、希望予算内での製作が不可能となり,今年度は自作したため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に自作した温度刺激装置は、短期的な使用は可能であるが、熱耐久性に若干の問題があり、度々の補修が必要で実験の効率が低下する。その点を改良すべく、またより安価で製作できるよう、デザインや材質を変更し、現在他の業者と製作の交渉しており、次年度使用額はその材料費と制作費に当てる。
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