エッジ照射型位相X線イメージングでは、検出器の前にX線の透過を強く妨げる金属のマスクを二カ所に配置する。一つ目は、撮影対象の試料の前に配置することでX線は帯状の光線にするためのもので、もう一つは試料の後で検出器の直前に配置し、透過したX線を受光する領域を規定するためのものである。試料を配置してX線を透過させた場合、空気と試料の屈折率の違いや試料内での屈折率の違いで生じる屈折によって帯状のX線は曲がり、検出面に到達するX線の強度が変化する。検出器によって検出されるX線の強度は、屈折だけではなく、試料内での減衰によっても変化することになる。 そこで本年度の研究では、検出器で観測されるX線の強度信号から位相X線の信号と吸収X線の信号を分離する信号分離のアルゴリズムの開発を行うとともに、推定すべき屈折率と減衰率の自由度が高いことによって生じるノイズへの過適応を防ぐための画像の局所的な滑らかさを促進するスパースな正則化項をもつアルゴリズムの開発を行った。検出器で観測される信号にはノイズが載っており、屈折に伴う位相X線の情報と減衰に伴う吸収X線の情報は、観測信号から直接得ることができないため、統計的には隠れ変数として扱うべきものとなっている。この隠れ変数にスパース性を仮定し、EMアルゴリズムでスパースな隠れ変数を推定することのできう一般的な推定手法を開発し、研究発表を行った。また、この手法を用いた位相X線CTアルゴリズムの構築を行った。
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