食品を高温で調理した時に生じるアクリルアミドは、動物実験により、発がん性および成長・生殖に対する毒性が示されているが、日本人の食品からのアクリルアミド摂取量はもとより、その健康影響に関する疫学研究は日本で行われていない。日本における食品中のアクリルアミド含有量の基礎データが最近蓄積されており、まず、それらのデータを基に日本の一般成人、小児を対象に、食事記録からアクリルアミド摂取量を推定し、また、今後、アクリルアミド摂取の健康影響評価を目指すため、その疫学研究に有用な食物頻度調査票による摂取推定方法を確立することを目的とした。本年度は、まずは日本の食品におけるアクリルアミド含有量データの収集にあたった。農林水産省、厚生労働省の公表データを主に、論文による報告、米国FDAデータも参照した。これらのデータを基に幼児428名における食事記録からの平均アクリルアミド摂取量は、21.0μg/d、最小値 2.7μg/d 最大値 98.4μg/dであった。幼児においては横断研究のデザインで、アクリルアミド摂取量と、生殖・発達機能に係る内因性の性ホルモン(尿中エストラジオール、テストステロン、デハイドロエピアンドロステロン、アンドロステネジオール)との関連性を評価した。男児においてアクリルアミド摂取量が高いと尿中テストステロン値が統計的に有意に高かった。女児においてはどの尿中ホルモン値とも有意な関連性は認められなかった。
|