研究課題/領域番号 |
15K15226
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
大津山 賢一郎 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10432741)
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研究分担者 |
常岡 英弘 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40437629)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CSD / ワクチン / バルトネラヘンセラ / N-ラウロイルーサルコシン |
研究実績の概要 |
現在わが国でネコひっかき病(以後CSD) 鑑別診断を行えるのは我々のみであり、患者検体が毎日のように送られてくる。本研究の目的はワクチン開発であり抗原となりうるタンパク質の抽出は必須である。 われわれはこれまで抗原となりうるバルトネラヘンセラのタンパク質を良質に抽出する方法を確立し特許出願中である(特願2015-105171:バルトネラ科に属する菌体由来の抗原を調製するための方法)。 CSDの原因菌バルトネラヘンセラから陰イオン界面活性剤であるN-ラウロリル-サルコシンを用いてタンパク抽出を行った。その後塩濃度によって抗原性の高いタンパク質の抽出に成功した。タンパク質抽出の際、上清と沈渣に分離できる。これらをCSD患者血清を用いてIgMのELISAを行うと、上清が24例中20例(83%)、沈渣が18例(75%)であり。さらに抗原抗体反応の一つであるIFAでCSD擬陽性と診断された血清でも上清では23例中10例(43%)に対し、沈渣では6例(26%)であった。またより感度の高いウエスタンブロット解析により確認した。以上のことから上清からより良質の抗原が抽出できることがわかった。このことはDevelopment of a Highly Specific IgM Enzyme-Linked Immunosorbent Assay for Bartonella henselae Using Refined N-Lauroyl-Sarcosine-Insoluble Proteins for Serodiagnosis of Cat Scratch Disease.Otsuyama K, Tsuneoka H, et al. J Clin Microbiol. 54 (4): 1058- 1064に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CSDワクチンには急性期に出現するIgMと慢性期に出現するIgGと反応する抗原を抽出する必要がある。平成27年度の研究成果ではとりわけIgMに反応する抗原抽出に成功し、またそれらの抗原をある程度特定することに成功している。IgMに対する抗原を抽出することは、ワクチンとして用いた場合感染初期に早急に反応しCSD症状を緩和できる可能性が非常に高い。したがって、当初の計画よりもさらに進んだ研修成果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
①抗原としてのタンパク質の同定および合成タンパク質の作成(研究代表者:大津山) I.精製したサルコシン抽出液(抗原液)を2次元電気泳動で分離後、バルトネラ感染ネコ血清10例および健常ネコ血清10例との反応をウエスタンブロット法で解析し、バルトネラ感染ネコ血清と特異性が高い代表的なタンパク質を抗原液から選出する。また選出したタンパク質スポットを切り出し、質量分析によりタンパク質を同定する。II.質量分析で同定されたタンパク質の遺伝子をPCR法にて増幅させ、クローニングする。III.発現ベクターpGEX-6p-1を用い、この遺伝子をGST融合タンパク質として大腸菌BL21(DE3)株に発現させる。次いで発現したタンパク質をアフィニティカラムクロマトグラフィ法にて精製する。 ②①で作成した合成タンパク質の細胞毒性試験(研究代表者:大津山)およびマウスへの接種(研究代表者:大津山, 連携研究者:徳田) I.ワクチンは細胞そのものに毒性を示してはならない。そこで、マウスマクロファージ細胞株RAW246.7で合成タンパク質の生存率(死亡率)の濃度依存性及び時間依存性を確認する。細胞の生存率(死亡率)をMTTアッセイによって確認する。マクロファージであるRAW246.7は貪食能を持つ抗原提示細胞であり、抗体を作る足がかりとなる細胞のため使用する。II.I.の確認後、抗体形成の有無を確認するため、マウスに直接合成タンパク質を接種し安全確認をする。マウスkgあたりの合成タンパク質濃度を決定し、静脈注射、筋肉注射、腹腔内注射のうち最も血清中の抗体価が多い接種法も同時に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は抗原抽出法がほぼ確立され、次年度から抗原特定に注力するため。
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次年度使用額の使用計画 |
抗原特定には質量分析が必要である。したがってその解析を行う。研究計画に従って最終年度までにワクチンを完成させる予定である。
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