研究課題/領域番号 |
15K15227
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
松尾 洋孝 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 講師 (00528292)
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研究分担者 |
山本 健 久留米大学, 医学部, 教授 (60274528)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 遺伝疫学 / 痛風遺伝子 / 個別化医療 |
研究実績の概要 |
1.消化器疾患の遺伝疫学的研究の基盤となる研究リソースの構築を進めた。炎症性腸疾患は比較的稀な疾患であるが、学内外複数の研究機関とも共同研究体制を構築し、すでに200例以上の炎症性腸疾患等の症例サンプルを集めた。さらに、臨床情報が充実している5,000人以上の健康診断受診者のサンプルの他、約50,000人の健康診断データベースも活用できる状況である。 2.痛風遺伝子ABCG2の病因変異(多型)と炎症性腸疾患の関連解析を進めた。消化器疾患の多数例のサンプルが解析可能な状態にあり、これまでに報告されることの無かった画期的な成果が得られる可能性が極めて高い。 3.痛風遺伝子ABCG2の病因変異(多型)とウィルス性腸疾患の関連解析を進めた。ノロウィルスやロタウィルス等によるウィルス性腸疾患についても、ABCG2のSNPの評価を行った。痛風遺伝子(ABCG2)の変異が消化器疾患増悪期の尿酸値を高める傾向があることを突き止め、論文投稿中である。 4.消化器疾患の新規合併症の原因因子の候補を選別し、それらの分子の炎症性腸疾患における病態生理学的役割を研究中である。炎症性腸疾患の増悪期と寛解期で遺伝子情報を含めた各種臨床情報を比較することは、ヒト腸管上皮における尿酸排泄機構の解明につながることが期待できる。 5.1から4の成果を総合して、炎症性腸疾患等の新規合併症の原因因子の同定とその分子病態への関与について解明することにより、炎症性疾患をはじめとする消化器疾患の新規の予防因子を明らかにして、それらの知見をもとにしたゲノムテーラーメイド医療の観点からのより適切な早期予防法の開発に資する成果を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床サンプルの収集と解析、及び炎症性腸疾患を含む消化器疾患の病態生理学的解釈においては、日本を代表する炎症性腸疾患の研究施設の1つであり、国内外でも高い評価が得られている防衛医科大学校・消化器内科(穂苅量太教授)の全面的な協力が得られており、理想的な共同研究体制がすでに構築されている。遺伝子解析については、分担研究者である久留米大学医化学・山本健教授と共同で実施している。尿酸トランスポーターの分子機能解析については、大阪大学薬理学・金井好克教授、東京大学医学部附属病院薬剤部・高田龍平副部長他の協力を得ている。健診サンプルの収集にあたっては、名古屋大学・予防医学 若井建志教授のご指導をいただいて共同研究を実施している。分子遺伝疫学的解析においては、若井教授の他、防衛医科大学校・衛生学公衆衛生学の櫻井裕教授と同・数学研究室の中村好宏准教授のご指導をいただいている。 研究設備と施設もこれまでの研究を実施する過程で効率化しており、キャピラリーシークエンサーや高速遺伝子多型解析装置、次世代シーケンサーなどは、防衛医大内の共同研究施設などで使用している。そのため、本研究を実施、完遂するための研究環境は、国内外の研究グループの追随を許さない状況にあり、極めて重要な研究成果を発信できる体制にある。
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今後の研究の推進方策 |
大規模分子遺伝学解析に適した検体採集をさらに進めて、研究リソースの充実化と研究基盤の構築を目指す。 痛風遺伝子ABCG2の病因変異と炎症性腸疾患の関連解析を進める。 痛風遺伝子ABCG2の病因変異とウィルス性腸疾患の関連解析を進めた結果、ウィルス性腸疾患について、痛風遺伝子(ABCG2)の変異が消化器疾患増悪期の尿酸値を高める傾向があることを突き止めたため、論文として報告する。 研究を遂行する上での問題点は現時点ではない。
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次年度使用額が生じた理由 |
同定された遺伝子座の評価のため。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子解析のために必要な試薬等を購入する。
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