研究課題/領域番号 |
15K15228
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
染谷 雄一 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (50283809)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ノロウイルス / ウイルス様中空粒子 / VLP / ワクチン |
研究実績の概要 |
ノロウイルス遺伝子群(Genogroup)Iに属する9つの遺伝子型(Genotype)について、VP1タンパク質(キャプシドタンパク質)をコードするORF2遺伝子をバキュロウイルストランスファーベクターにクローニングした。次いで、Sf9昆虫細胞を用いて、それぞれの遺伝子型のVP1タンパク質を発現する組換えバキュロウイルスを作成した。Genogroup IIについては22種のGenotypeのうち3つの遺伝子型について同様に組換えバキュロウイルスを作成した。通常、ウイルス様中空粒子(VLP)は以下のように調整する。作成した組換えバキュロウイルスをT. ni昆虫細胞(HighFive細胞と由来は同一であるが、別メーカーより購入した)に感染させ、1週間後培地を回収する。VP1タンパク質が集合して形成するVLPは回収した培地から超遠心で沈殿させ、適当な緩衝液に再懸濁の後、塩化セシウム等密度勾配遠心で分離する。現時点で、GI.2(Genogroup I, Genotype 2を意味する)のフナバシ株、GI.3のカシワ株、GI.4のチバ株、GI.6のWUG1株のみVLP調製を行ったが、GII.6のウエノ株に比して著しくVLP生産量が少なく、およそ100分の1程度と見積もられた。 GI.4チバ株、GI.6 WUG1株のVLPについては、ラットの免疫を開始したところであり、今後追加接種を経て、血清の調製を行う。 また、T. ni昆虫細胞の他に、SuperSf9-1昆虫細胞、SuperSf9-3昆虫細胞をVLP調製のために試したが、VLP生産が認められず、T. ni昆虫細胞よりも劣った結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Genogroup Iの種々の株に特に着目してVLP調製を行っているが、培養バッチ毎にばらつきがあり、且つ、Genogroup IIのノロウイルス株や他のウイルス由来のVLPに比べ、生産量が著しく少ないという問題点が見いだされた。現在の培養スケール(全量約300~400 mL)を更に上げることも可能であるが、操作を考慮すると2~3倍程度が限度である。また、昆虫細胞のコドン使用頻度に至適化した遺伝子の合成を行いVLP発現を試みたが、劇的な効果は認められず、むしろ、悪くなるような印象があった。
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今後の研究の推進方策 |
Genogroup I株VLPの安定的な大量発現は、個人のみならず、所属部署にとっても有益であるので、Genogroup I株に集中してVLP発現を継続する。培養のスケールアップのほか、昆虫細胞での発現を促進させるような配列をVP1タンパク質遺伝子のN末に付加するなど、遺伝子の改変を行う。平成27年度にVLP調製を行ったGI.2株、GI.3株、GI.4株、GI.6株は国内で頻繁に分離される遺伝子型であるので、特に集中的に行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
VLP調製が計画通りに進行せず、実験動物の免疫、免疫後血清中の抗VLP抗体の検出の実施が遅れたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
現在数匹のラット(2種のVLPについてそれぞれ2匹ずつ)を用いて免疫を行っているが、統計学的な取り扱いを考えると少ないので、平成28年度のなるべく早期に、充分量のVLPを少なくとも4つの流行株について調製し、実験動物(ラット)の免疫を行いたい。
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