研究実績の概要 |
2型糖尿病(DM)は心血管疾患・脳血管疾患の危険因子であるが、バングラデシュでも他の開発途上国同様、近年都市部の富裕層に増加が著しい。一方で小児の低栄養もいまだ大きな健康課題である。低出生体重児の幼児後期以降の体重増加は、将来の生活習慣病の危険を増すと危険視されている。バングラデシュの成人DMの有病率は10%と報告されているが小児についての統計はほとんどない。 今回の研究では、農村部の10歳から19歳の小児を対象にDMと肥満の有病率を調査することを目的にした。 共同研究機関であるicddr,b(バングラデシュ国際下痢症研究所)と東大の倫理審査委員会の承認はそれぞれ2017年10月19日・10月24日に得た。現地調査はicddr,bの人口約11万人の人口動態調査地域で10月31日に開始した。標本数は292が必要と計算され360名を無作為に抽出した。また既存データを用い、無作為抽出した2016年と2001年の同地域の5歳児、それぞれ1658名と1587名の体格を比較した。322名に身体計測と運動・食事等の質問票調査を行い、298名に毛細管血による空腹時血糖とHbA1cの測定を行った。食事後2時間までの尿糖の有無をチェックした。 これらの結果で異常の認められたものは60名で、このうち54名にブドウ糖負荷試験を実施した。DMと診断されたものはなく境界型DMと診断されたものが1名であった。また2016年の身体計測の結果では、身長107.8cm 体重16.5kg BMI 14.2で、2001年のそれぞれ103.5 14.8 13.8に比し、体格は有意に向上していたが、肥満の傾向は認めなかった。 バングラデシュの農村の小児では、肥満・糖尿病はまだ大きな問題ではないが、今後の小児の体格の向上を考えると、先制医療の立場からの対処が望まれる。DMと肥満についてのデータ解析をさらに続ける。
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