研究課題
ナノテクノロジーは、新材料創出、医療応用、地域温暖化防止に関係する環境技術等に応用可能であり、社会への貢献が期待される一方、ナノ素材などの新規工業的素材の健康への影響に社会的関心が高まり、生体影響に関するリスク評価が求められている。本研究では、今後その応用が期待されているナノカーボン(カーボンナノチューブ)に注目し、動脈硬化や血管修復に対する影響を検討し、炎症誘導機構を解明することを目的とした。本年度は、動脈硬化モデルマウスであるApoE欠損マウスを使用し、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブを咽頭内投与し、血管障害への影響を検討した。カーボンナノチューブ投与後に、大動脈弓を、オイルレッドO溶液で染色し、動脈硬化の程度を検討し、またリアルタイム定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により、胸部大動脈におけるインフラマソーム関連遺伝子のmRNA発現レベルを分析した。
2: おおむね順調に進展している
動物実験にて、カーボンナノチューブ高濃度投与後の動脈硬化モデルマウスの大動脈において、接着因子の遺伝子発現が増加し、動脈硬化形成が促進されることを明らかにした。また、カーボンナノチューブの血管障害にインフラマソームを介した炎症誘導機構が関与する可能性が示唆され、国際学会で報告している。
転写因子NFE2-related factor 2 (Nrf2)に着目し、Nrf2遺伝子改変マウスを使用することにより、Nrf2を介したインフラマソームの形成やその活性化に対する役割を分析し、より詳細なカーボンナノチューブによる炎症誘導機構を明らかにしていく予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件)
International Journal of Molecular Sciences
巻: 17 ページ: E576
doi: 10.3390/ijms17040576
Toxicology Reports
巻: 2 ページ: 692-701