研究課題/領域番号 |
15K15237
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
及川 伸二 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10277006)
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研究分担者 |
矢田 健一郎 三重大学, 医学系研究科, 産学官連携研究員 (40467361)
福原 潔 昭和大学, 薬学部, 教授 (70189968)
冨本 秀和 三重大学, 医学系研究科, 教授 (80324648)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 酸化ストレス / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
現在の日本の高齢化率は26.7%であり、2060年には約40%になると予測されており、他に類を見ない高齢社会が現実となっている。65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症患者数が462万人と、65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15.0%)であったが、平成37(2025)年には約700万人、5人に1人になると見込まれている。その中でも、アルツハイマー病は、認知症患者の約60-80%を占めているが、その根治的治療法は未だ確立されておらず、進行を抑制するためには早期発見による予防的治療が必要である。アルツハイマー病の発症には酸化ストレスが関与していることがよく知られていることから、本年度では、アルツハイマー病患者の血漿を用いてプロテオーム解析を行うことで、アルツハイマー病のバイオマーカーになり得る酸化損傷タンパク質の探索を行った。その結果、8種のタンパク質スポットが1.5倍以上有意に酸化損傷を受けていることが明らかになった。これらのタンパク質の酸化損傷の増加がバイオマーカーになる可能性があるため、現在タンパク質の同定を行っている。また、マウスを用いた実験では、Heat shock protein 27等が上昇しタウの毒性に対して神経保護作用を示す可能性が示唆された。動物用高感度・高分解能PET/MRIによる画像解析においては、現在までに18F-FDGを用いてPET画像を撮像し炎症部位の解析を行った。さらに、アミロイドβと反応すると考えられている抗酸化剤モリンを基盤としたPET試薬を開発するため、モリンの安全性の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルツハイマー病の発症原因のひとつに考えられている酸化ストレスに着目し、酸化損傷タンパク質を指標としたバイオマーカーの探索を行った。トランスジェニックマウスを用いた実験から、神経保護に関与するタンパク質を同定した。モリンの安全性については、ある濃度においてDNAに損傷を与える可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
アルツハイマー病患者の血漿を用いたバイオマーカーの探索を継続する。特に、早期のアルツハイマー病の患者を用いて、酸化損傷タンパク質の変動量の解析を行う。モリンについては、今後細胞などを用いて安全性の検討を続ける。PET画像の解析では、炎症部位の特定には至っていないので、更なる解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
国外の会社が製造している試薬で年度末までに入荷できなかったこと、使用期限が短い試薬を次のロットの製造まで待つこと等により、予算が次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの試薬は本研究に必要なため、未使用金は消耗品費として順次使用していく。
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